研究実績の概要 |
今年度は、ベクトル中間子の寄与までを含めたエータプライム中間子と核子の結合チャネルを取り入れた散乱についての定式化を進め、そこから原子核媒質中でのエータプライム中間子中間子のスペクトラム関数を見た。そこから、有限媒質の効果が、エータプライム中間子の質量および崩壊幅に対して、どのような影響を与えるかについて見積もった。また、原子核密度の2乗の効果まで取り入れた、ポテンシャルを計算し、二核子吸収の効果まで取り入れた束縛エネルギーの計算を行った。 アノマリーの効果を模したetaシングレットと核子の相互作用により、エータプライム中間子=核子束縛状態として新しい核子の励起状態が生成され、その結果、エータプライム中間子原子核間ポテンシャルに強いエネルギー依存性が見られることが分かった。束縛エネルギーの計算の結果、束縛エネルギーより、崩壊幅が小さい事が分かったが、強いエネルギー依存性のため、多くの束縛状態が存在し得ることを見た。 またこのポテンシャルを用いて、12C を標的核とした(p,d)反応のスペクトラムの計算を行った。運動学的なパラメータは過去の実験と同じものを用いた。その結果、有限の運動量移行のため、様々な角運動量の状態が励起されてしまい、多くの束縛状態のピークが重なった結果、独立したピークとして観測し得ない可能性を見た。また束縛状態が存在する領域は過去の実験において、実験データが比較的少ない領域である可能性も見た。今後さらに計算を進めて、様々な条件の下に散乱断面積を出して行く準備が整った。
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