研究課題/領域番号 |
21K03537
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
宗 博人 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20196992)
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研究分担者 |
加藤 光裕 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80185876)
坂本 眞人 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30183817)
加堂 大輔 同志社大学, 理工学部, 准教授 (90447219)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 格子場の理論 / ライプニッツ則 / 確率過程量子化 |
研究実績の概要 |
2021年度は、A. 一次元巡回ライプニッツ則の更なる理解、B. 複素に組んだ二次元巡回ライプニッツ則の状況と理解、C. 巡回ライプニッツ則の応用についてに取り組んだ。 A.について、従来、一次元巡回ライプニッツ則の二体積の規則や三体積の規則を詳しく調べてきていたが以下の項目に絡んで、一次元巡回ライプニッツ則の一般的な積の規則を詳しく調べる必要がある。巡回ライプニッツ則は積の規則について線型なので、解空間として「線型」である。この「線型」は従来の線形空間の定義と違い、解に巡回不変な関数を掛けても巡回ライプニッツ則を満たす。一般のn体の積には「独立」としての解の個数はn個以下であり、また、一般のn体の積の解が存在することも分かってきた。 これから、さらに巡回ライプニッツ則について包含的に正確に理解していきたい。 B. 二次元Wess-Zumino模型を格子上に実現する素直な方法は、複素に組んだ二次元巡回ライプニッツ則を使う方法である。しかし、複素に組んだ二次元巡回ライプニッツ則は自明でかつ局所的には格子上では実現が難しいことが分かってきた。そのため、hybridの方法(一方向を連続、一方向を格子)や一方向を多フレーバー化とみなす方法あるいは、複素に組まない二次元巡回ライプニッツ則の方法を展望したい。 C. 二次元Wess-Zumino模型をも含む高次元理論の量子化の一つに、確率過程量子化法がある。これは、仮想時を付け加えて、ランダム力を外力として加えると時間発展の末に、正準量子化の結果を再現するものである。この確率過程量子化法はフェルミ場を導入すると自然に超対称性を生成する。この時、仮想時を離散化(格子化)した場合、格子上のライプニッツ則の問題が生じることが分かった。この時、一次元巡回ライプニッツ則を満たす積を採用すると、超対称も格子上で厳密に成立することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格子上での局所的で非自明な高次元巡回ライプニッツ則の解がなかなか見つからず、高次元での格子上での超対称性の実現はまだ難しいことが分かってきた。この直接的な方法が難しいということが当初予期できなかった事項だが、離散的な確率過程量子化法で巡回ライプニッツ則が適用できる可能性が出てきて、その方向で現在研究を進めている。この確率過程量子化法では経路積分での表現で、自然に超対称性(Parisi-Wuの対称性)が出てきて、この方法の表現で巡回ライプニッツ則が利用できることが分かってきた。 また、これにより高次元での超対称性の実現も可能性が出てきた。さらに一次元巡回ライプニッツ則のより深い一般的な性質が分かってきた。
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今後の研究の推進方策 |
格子超対称性での一次元巡回ライプニッツ則(CLR)の解の一般的な性質を理解していく。 さらに離散仮想時での確率過程量子化法(Parisi-Wuアプローチ)での対称性(格子上の超対称性)とCLRの関係についての議論をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、研究代表者と研究分担者(3名)の計4名が、異なる県での異なり研究機関に 属するため、研究費の大部分を研究打ち合わせのための旅費に計上していた。しかし、コロナ禍で、県外移動がままならず、実質的に一回しか一同が集まれなかった。その間、メールやZoom会議など、ネット的に会合を持った。次年度はコロナ禍の状況が改善されると期待して、より多くの研究打ち合わせを国内旅費を使って行う。 また、本申請時と異なる事情(申請の金額が採択時での減額や研究手法の転換など) により、計算機購入費用を国内外での旅費として使用する予定である。
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