研究課題/領域番号 |
21K03538
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
奥村 健一 岩手医科大学, 教養教育センター, 准教授 (40403935)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超対称性 / 電弱対称性の破れ / 階層性問題 / ヒッグス粒子 / ベクトルクォーク / W', Z' |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、数TeVから10TeVの領域に物理に基づいた自然な超対称性模型の構築し、その現象論的解析を行うことである。本年度は昨年度に引き続きquiver supersymmetric standard modelの研究を進めた。昨年度までに双基本表現場のポテンシャルやヒッグス場の有効ポテンシャルの計算を行い、必要な真空の存在を確認、電弱対称性の破れの微調整の度合いの評価を行った。これにより当該模型により量子補正を含めても既存の模型よりも大幅な微調整の緩和が可能であることを明らかにした。この成果についてThe 25th International Conference From the Planck Scale to the Electroweak Scale (PLANCK2023)で発表を行った。研究面では昨年に引き続き、当該模型において観測されているヒッグス粒子の質量を再現できるか否かを確認するために有効ポテンシャルの2回微分とヒッグス粒子の質量の数値計算を継続した。数値計算の信頼性を確認するために模型の超対称極限において予想される結果が再現されるかどうか確認を行ったが、一致が得られず、計算コード、解析式など様々な側面から原因の特定を行なった。ケーラーポテンシャルへの追加項の必要性、超対称性理論における自発的に対称性が破れた有効ポテンシャルの繰り込み手法、ゲージ固定法やゴーストの寄与などについていくつかの誤解やミスを発見したがヒッグス質量に関して超対称極限での予想値との不一致の原因の特定に至っていない。ヒッグス質量は本研究において重要な現象論的予言であり、現在もこの不一致の原因を特定するために試行錯誤を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
個人的な事情として申請時には予想されていなかった家族の病気による介護、不幸とその事後処理のため研究に割く時間を十分にとれなかった。一方で研究面においては解析計算について計算量の評価が甘く、手計算の範囲を超えて計算を続けてしまった。本来代数計算ソフトで対処すべきところだが目的とする計算を行うには既存アプリケーションの精査や研究が必要であり、導入のための敷居が高くて本格的な導入に至らなかった。また代表者一人で研究を進めていることもあって計算上の概念的な間違いに気づくのに予想以上に時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
1ヶ月程度を目処にヒッグス質量の計算を完了させ、これまでにすでに得られている成果を合わせて9月までに論文にまとめて発表する。本研究の成果について国際会議、国内研究会などで発表を行って関連研究者と議論を行い、本研究をもとにした新たな共同研究に繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
個人的な事情として申請時には予想されていなかった家族の病気による介護、不幸とその事後処理のため研究に割く時間を十分にとれなかった。これにより1年超の研究遂行上の遅れが生じ、予定していた国際学会や国内研究会での成果発表ができず、予定していた旅費を使用できなかった。現在研究は進捗しており、論文発表の目処が立った時点で国際学会2件程度及び国内学会に参加し、発表を行う予定。その旅費として次年度使用額を使用する。
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