研究課題/領域番号 |
21K03541
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研究機関 | 東京経営短期大学 |
研究代表者 |
安井 良彰 東京経営短期大学, その他部局等, 准教授 (50389839)
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研究分担者 |
石川 正 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, シニアフェロー (90184481)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 量子補正 / トップクォーク / 電弱総合作用 / QCD / ヒッグス粒子 / フレーバーの物理 / 計算機科学 |
研究実績の概要 |
我々は電弱相互作用の高次量子補正に焦点をあて、摂動論2ループオーダー(2次摂動項)での素粒子反応計算システムの開発を進めている。摂動論的手法は素粒子反応過程の解析では一般的な手法であるが、実際の電弱相互作用を含む高次量子補正の解析には莫大は計算が必要になり、計算機科学的な手法の導入とそのシステム開発が求められる。特にトップクォークなどの重いクォークの超精密測定実験は、新しい物理学を検証するプローブとして期待されており、解析の決め手となる理論計算の精度も限界まで高める必要がある。クォークは強い相互作用(以下QCD)とよばれる素粒子反応が支配的であり、このQCDの解析については多くの研究がなされている。一方、クォーク希崩壊過程の多くは電弱相互作用の量子効果を起源にしており、電弱相互作用の高精度解析が重要と考えられる。本研究では、まずトップクォーク希崩壊過程の一つであるフレーバー量子数非保存と呼ばれる反応過程について高次量子補正の計算を試みる。この散乱過程は電弱相互作用を起源しており、またQCD量子補正の寄与が支配的であることから、QCD+電弱相互作用の2ループレベルの解析をターゲットとして考えている。我々はこれまでの研究で1ループレベルの電弱相互作用解析のシステムを開発し、同システムを用いて先駆的な成果を上げてきた。そこで、これらの経験を踏まえて今回ターゲットに考えているトップクォーク希崩壊過程に必要なシステムへの拡張を行っている。特に希崩壊過程ではこれまであまり重視していなかった、小林益川行列を含む散乱振幅をシステムに取り入れる必要があり、現行システムに対してこれらの改修を進めた。また、2ループレベルでの繰り込み処方について形式化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では手始めに最も計算が簡単なプロセスとしてトップクォークからチャームクォークとヒッグス粒子への崩壊過程を考えている。この研究に先立ち我々は電弱相互作用におけるミューオン粒子異常磁気能率の2ループレベルの完全計算を既に行っているが、この経験をベースにして、システムの修正と拡張を進めており、2ループ数値解析に向けた準備はかなり整ったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果をもとに具体的な数値計算を進めていく。量子補正の計算は繰り込み処方に不定性が残っているが、ここでは電弱総合作用の解析で一般的に用いられる質量殻上繰り込み処方を適用して、解析を進める予定である。現在解析を進めているトップクォークからチャームクォークとヒッグス粒子への崩壊過程は理論的な構造がシンプルで、システム開発におけるサンプルプロセスとしては非常に有効と思われるが、一方で実際の物理実験の測定では散乱断面積が著しく小さい為に現実的ではない。そこでより現実的な散乱過程、例えばトップクォークからチャームクォークとZ粒子への崩壊過程などへの応用を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度購入を予定していた機材と購入の順番を入れ替えたこと、ならびにコロナの影響で予定していた旅費使用が中止になった為、次年度使用に変更した。 次年度において本年度購入予定であった機材の購入並びに本年度実施できなかった研究打ち合わせ等の旅費等に使用する。
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