研究課題/領域番号 |
21K03542
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
長谷部 一気 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (60435469)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 高次元非可換幾何 / 高次元ランダウ模型 / 非可換ゲージ群のモノポール / アティア=シンガーの指数定理 / 高次元トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
本年度は双極磁荷を有する4次元ランダウ模型の構築とその非可換幾何の解析を行った。研究代表者が2020年に詳細に研究したSU(2)モノポール磁場中における4次元球面上のランダウ模型の研究(Nucl.Phys. B 956 (2020) 115012)を更に発展させ、SO(4)モノポール磁場中の量子力学問題を厳密に解くことに成功した。SO(4)群は直交群のなかで唯一の半単純群となっておりSU(2)×SU(2)の群構造を持っている。SO(4)モノポールの系は、単に群がSU(2)から拡大したという単純な意味を持つものでなく、二つのSU(2)構造を有するモノポールと反モノポールの双極磁荷を物理的に表すものであり、大変興味深い。群構造が複雑になれば、シュレーディンガー方程式を解くことは困難となるが、今回は量子場の理論で用いられる非線形表現の手法を応用し(具体的にはWigner のD行列を一般化することにより)シュレーディンガー方程式の固有値問題を正確に解くことに成功した。その結果、これまで知られていなったセクター構造を有するランダウ準位を理論的に発見した。更に得られた固有状態を用いて、行列幾何の観点から最低ランダウ準位における行列幾何について解析を行った。また多体波動状態を表すラフリン関数もあらわに構成を行った。相対論的な場合についても調べ、そのディラック演算子のゼロモードとSO(4)モノポールの磁荷が等しいことを具体的に証明した。このことはアティア=シンガー定理のSO(4)ゲージ場における実現である。 本年度の研究により、SO(4)非可換ゲージ群のモノポール磁場中の量子力学の系についての特徴的な構造が明らかとなった。これまでのSU(2)モノポール磁場中の4次元ランダウ模型の研究成果を特殊な場合として含む、より一般的な枠組みを定式化することに成功したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画どおり、SO(4)モノポール磁場中のランダウ模型の固有値問題の解析を遂行することが出来た。得られた非可換幾何や多体状態もこれまでの研究成果を内包する形で自然に与えているため、納得のいく結果となっている。また予想もしていなかったセクター的なランダウ準位の構造が明らかとなった。本研究自体の重要性とともに、次年度以降の研究のための基礎固めは出来たと考えている。そのため区分(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究においては最低ランダウ準位における非可換幾何の構造を専ら議論してきた。群がU(1)アーベル群のランダウ模型の場合は最低ランダウ準位と高いランダウ準位の構造は質的に大きな違いはなく、最低ランダウ準位を調べれば十分であった。しかし本研究で扱っている非アーベルゲージ群の場合は、高いランダウ準位と最低ランダウ準位で質的に異なる構造を有する。そのため高いランダウ準位において新たな非可換構造が実現している可能性があり、研究代表者は2020年の論文において実際その一部を明らかにした。しかし未だその全貌を明らかにするには至っていない。計算量が多くなることが予想されるため、今後は計算ソフト等を活用し高いランダウ準位における非可換構造について詳細に調べることを計画している。また、SO(4)モノポールは、チャーン数のみならずオイラー数を拡張した二つのトポロジカル数を有している。その一般化されたオイラー数が高次元のトポロジカル相でどのような役割を果たすのか明らかにすることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の未使用分が生じたので文房具等で消費する予定である。
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