研究課題/領域番号 |
21K03550
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
江尻 信司 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10401176)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 素粒子論 / 計算物理 |
研究実績の概要 |
QCDの有限温度相転移は、低密度では熱力学的特異性を持たないクロスオーバーで、ある臨界密度から一次相転移に変わると予想されている。その高密度での相転移の性質の変化を、熱浴中での粒子密度の出現確率を表す確率分布関数に注目して研究している。粒子密度の確率分布関数は粒子数を固定したカノニカル分配関数を構築することによって得られる。しかし、格子QCDの有限温度相転移を理解するうえで重要なセンター対称性が、有限体積で厳密に保たれている場合、粒子数が3の倍数の場合を除き、確率分布関数は必ずゼロとなる。U(1)ゲージ理論の場合、この問題はより深刻でセンター対称性により粒子数がセロ以外のカノニカル分配関数はすべてゼロになってしまう。本研究では、その問題に対する解決策を議論した。同時に、有限密度格子ゲージ理論における重要問題である符号問題の、センター対称性による回避方法を提案した。有限体積で計算する場合、センター対称性を微小に破らない限り正しい計算はできない。まず、極端な例であるU(1)格子ゲージ理論において、フェルミオン質量が重い場合に、実際に数値シミュレーションを行い、本研究で提案した方法により有限密度でのカノニカル分配関数の計算が可能であることを例示した。さらに、この方法のQCDへの適用について議論した。 カノニカル分配関数はフェルミオン行列式のホッピングパラメータ展開(フェルミオン質量の逆数による冪展開)と密接に関係がある。その展開の各項を有限密度への影響の大きさで分類して、展開項の大きさや収束性を議論した。また、動的クォークが重ければフェルミオン行列式が少数の展開項で近似できるので、ホッピングパラメータ展開によって、クォークが重い領域での一次相転移がクロスオーバーに変わる臨界質量を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カノニカル分配関数を計算する方法を提案して、まずU(1)格子ゲージ理論で動的フェルミオンが重い場合の計算を行った。さらに、SU(3)ゲージ理論にその方法を適用するための議論を行った。さらにカノニカル分配関数と密接な関係にあるフェルミオン行列式のホッピングパラメータ展開を非常に高次まで行うことにより、その展開項の大きさや展開の収束性を議論した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、動的フェルミオンの質量を軽くしても格子ゲージ理論のカノニカル分配関数が計算できるかどうか、さらにQCD(SU(3)格子ゲージ理論)に適用することを議論して、現実世界の有限密度QCDの研究に近付ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議への参加を予定していたが、中止またはオンライン開催となった。また、国内の学会・研究会もオンライン開催となった。大学から自粛を要請され、共同研究のための出張もできなかったため、旅費が全く使えなかった。その余った旅費は次年度以降に物品費として有効に使用したい。
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