近年、連星中性子星の合体時に放出される重力波の観測データを解析することにより、中性子星の状態方程式の情報を得ることができるようになった。さらに詳細な中性子星内部の情報を得るためには、中性子星の内部構造や磁場構造を取り入れた一般相対論的な連星中性子星モデルを数値的に構築することが必要である。本研究では最終目標として、中性子星の中心部分に存在するコアが中性子と陽子の2流体で構成されているとし、さらに中性子星が磁場を伴っている状態で、連星中性子星の進化系列の準平衡段階での物理過程を解明することを掲げている。このモデルによって構成した準平衡解を用いて、内部構造や磁場構造が中性子星の潮汐変形度などの物理量に対して与える影響を調べ、さらに、その準平衡解を連星中性子星合体シミュレーションの初期データとして提供し、重力波物理学に貢献することを目指している。 今年度は、中性子星全体を2流体として扱った連星中性子星の準平衡解を求める数値計算コード開発を継続し、昨年度完成させた重力場の方程式を解く部分に加え、流体の方程式を解く部分も完成させた。2流体共に軌道運動と同期している場合について、全く同じ中性子星で構成された連星系のモデルを採用し、連星間距離が離れているところから合体前までの系列を求めた。中性子星の重力質量とコンパクトさがこのモデルと同じ場合の1流体モデルとの比較を行った結果、同じ軌道角速度に対して、2流体の場合の連星系の結合エネルギーがやや小さくなっているが、その差は極めて小さいことが分かった。また、2流体のうちの一つの流体(中性子を想定)を、軌道運動に対して渦なしの状態と仮定し、もう一つの流体(陽子を想定)を軌道運動に対して同期していると仮定した場合についても、数値計算コードを書き上げ、現在改良中である。 上記の研究に加え、孤立した中性子星における磁場についての共同研究も行った。
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