研究課題/領域番号 |
21K03562
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
長尾 桂子 岡山理科大学, 理学部, 講師 (90707986)
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研究分担者 |
中 竜大 東邦大学, 理学部, 講師 (00608888)
東野 聡 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (00895469)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / 暗黒物質の密度プロファイル / 宇宙線 / Wボソン |
研究実績の概要 |
近年の暗黒物質の直接検出実験の結果から、MeVスケール以下の質量を持つ軽い暗黒物質が有望視されている。このような軽い暗黒物質は宇宙線によって加速され、高い運動エネルギーを伴うイベントとして検出される可能性が指摘されている。 本研究では、特に暗黒物質密度が高い銀河系の中心方向から、宇宙線による加速を受けて地球に到来する暗黒物質を方向の情報を用いて検出する手法について検討を行った。N体シミュレーションの結果から示唆される暗黒物質の代表的な3つの密度分布(NFWプロファイル、Einastoプロファイル、isothermalプロファイル)を想定して、実験で検出される方向情報をシミュレーションした。その結果、方向情報を検出できる直接検出実験であるNEWAGE(CYGNUS)実験、NEWSdm実験での、宇宙線に加速される暗黒物質の将来的な検証可能性を示した(arXiv:2211.13399, 投稿中)。 また、当該年度である2022年には、CDF実験から、測定されたWボソン質量の異常が報告された。この報告を受けて、Wボソンの質量異常やこれまでに示唆された実験結果から示唆される素粒子模型を離散対称性やU(1)R対称性、U(1)Lμ-Lτ×U(1)H対称性などを用いて構築し、実験の制限から許されるパラメータ領域を示した。特に、それらの模型に含まれる暗黒物質の性質や観測からの制限を明らかにした(Phys.Rev.D 106 (2022) 11, 115011)(Eur.Phys.J.Plus 138 (2023) 4, 365)(arXiv:2212.14528, 投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の目標は、宇宙線によって加速される軽い暗黒物質の到来情報をシミュレーションし、検証の将来的な可能性を明らかにすることであった。この結果は当該年度でまとめることができ、現在論文を学術誌に投稿中である。 一方で、宇宙線によって加速される暗黒物質は高い運動エネルギーをもつため、直接検出実験での標的との散乱が非弾性散乱となる場合があると考えられる。暗黒物質の非弾性散乱は、暗黒物質の素粒子論的な性質や相互作用に大きく左右されるため、当該年度では弾性散乱にはならない散乱を含めず解析した。しかし実際は、含めなかったイベントも解析結果に大きく影響すると考えられるため、弾性散乱以外の散乱を起こす場合について今後検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】で述べた通り、直接検出実験での暗黒物質と標的の散乱のうち、弾性散乱以外の散乱イベントを検討し、解析に含める必要がある。今後は、素粒子論的なWIMP暗黒物質を想定し、その相互作用の種類によって起こる弾性散乱以外の散乱を分類し、シミュレーションに含めて解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で出張等が当初の計画通り行えなかった。また、半導体不足や急激な円安によって、当初に購入を予定していた計算機が値上がりして購入できなかったため、やむを得ず現状の計算機で容量を増やしたりメモリを増設したりして対応した。そのため、余剰分が生じた。
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