研究課題/領域番号 |
21K03567
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川崎 雅裕 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (50202031)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 原始ブラックホール / オシロン / Qボール / 宇宙初期の元素合成 |
研究実績の概要 |
今年度は原始ブラックホールの空間分布とノントポロジカルの一つであるオシロンとQボールに関する研究をおこなった。原始ブラックホールに関しては,アフレック・ダイン機構に基づくブラックホール生成モデルについて,このモデルではブラックホールが空間的に非一様に作られることを示し,定量的に空間相関を求める定式化を行った。この定式化に基づいて原始ブラックホールが作る等曲率揺らぎを評価し,宇宙マイクロ波背景放射から厳しい制限が得られることを明らかにした。さらに,ブラックホール連星の合体率を空間相関を考慮して再評価してブラックホールが一様に分布する場合と大きく異なることを示した。 非常に軽い質量を持つアクシオン模型におけるオシロンの崩壊を格子シミュレーションを用いて詳しく調べ,崩壊後のアクシオンの速度分布を求め,アクシオンの平均自由行程を評価し,それが宇宙の小スケール揺らぎを減衰させることを明らかにして,密度揺らぎの観測からアクシオンの質量,オシロンの寿命に対して制限が得られることを示した。 観測グループと協力して宇宙初期に生成されたヘリウム4の原始存在比を推定し,従来より低い存在比を求め,それが宇宙が大きなレプトン非対称性を示唆することを示した。さらに,超対称性理論の枠組みで大きなレプトン数を宇宙に生成する模型をレプトン数を持ったQボール(Lボール)を用いて構築し,宇宙のバリオン数の観測と矛盾なくレプトン数が生成されることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍によって対面による議論が制限された中でも,共同研究を進めることができ,原始ブラックホールの空間分布に関して新たな知見が得られ,アクシオン模型におけるオシロンが小スケール揺らぎに与える新たな影響を明らかにすることができた。また,宇宙のレプトン数非対称性の可能性をそれを実現する理論モデルが構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を継続して,原始ブラックホールの生成模型発展させていくとともに,ノントポロジカル・ソリトンの小スケール揺らぎに対する影響を探求していく。また宇宙のレプトン数に関する宇宙論的理解を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値シミュレーションのための高性能計算機を購入する予定であったが,計算機の発売が遅れたため購入することができなく,未使用額が生じた。翌年度の助成金と合わせて購入する予定である。
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