研究課題/領域番号 |
21K03578
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
安田 修 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (50183116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ニュートリノ振動 / フレーバー混合 / ニュートリノ質量 / ステライルニュートリノ |
研究実績の概要 |
現在建設中である日本のT2HK実験とアメリカのDUNE実験では、CP位相が決定されると期待されている。一方、これまでの解析では地球密度の不定性は考慮されて来なかったが、CP位相を精度良く測定するには、地球物質密度の不定性がCP位相の測定にどれだけ影響するかも考慮する必要が出てくる時代になってきた。特に基線長の長いDUNE実験では、物質効果が大きく影響するため、地球密度不定性を考慮することが必要である。地球の物質密度の不定性については、地球物理の研究者Geller-Hara(2001年)によって、5%程度が妥当であると議論されているが、この研究では密度の不定性が悲観的な場合も含めて、0%、5%、10%の場合にCP位相の測定値の精度について調べた。その結果、基線長の長いDUNEでは、物質効果が比較的大きいため、無視出来ない効果が存在することがわかった。 研究代表者による昨年の研究により、(3+1)-スキームで新たに現れる混合角θ(41)、θ(42)、θ(43)のうち、(i) θ(41)≠0、θ(42)=θ(43)=0の場合と(ii) θ(41)=0、θ(42)≠0、θ(43)≠0の場合に、それぞれ2種類間の混合の問題に帰着することが示され、解析的なニュートリノ振動確率の解析的表式が与えられている。一方、LSND実験とMiniBooNE実験の結果はθ(41)≠0、θ(42)≠0の場合に対応し、高エネルギーの場合でも物質中におけるニュートリノ振動の確率を解析的に表すことは難しいことが知られている。この研究では、θ(41)≠0、θ(42)≠0の場合に、それぞれの混合角が小さいと仮定し、混合角に関する摂動論で解析的表式を与えた。その結果、ニュートリノモードではν(e)⇔ν(s)の混合角が増幅され、反ニュートリノモードでは反ν(μ)→反ν(s)の混合角が増幅されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目に始めた大気ニュートリノによる種々の非標準シナリオの検証のシミュレーションに関しては、技術的な問題が若干あり、まだ継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
3年目には大気ニュートリノによる種々の非標準シナリオの検証に関する研究を数値的に行う一方、高エネルギー領域における物質中のステライルニュートリノ振動確率の解析的表式についてより一般的な場合について研究する予定である。又、研究協力者のGhosh氏を招聘し、長基線実験の現象論に関する研究も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度も新型コロナの影響で海外の国際会議での発表が出来ず、外国旅費を使用することが出来なかった。2023年度はこれまでの分を挽回する予定である。
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