研究実績の概要 |
2004年に研究代表者によって考え出されたパラメーター縮退を表す図は、P(ν(μ)→ν(e))=一定、P(反ν(μ)→反ν(e))=一定で指定される点の軌跡を(sin2θ(13)**2,1/s(23)**2)平面内でプロットし、八重のパラメーター縮退の様子を可視化するものであったが、CP位相を測定する長基線実験の計画が具体化された後に、この図によりパラメーター縮退が解決される様子を議論した研究はなかった。そこで今年度の研究では、現在建設中の加速器ニュートリノ実験であるT2HK実験(日)とDUNE実験(米)、さらには将来計画として検討されているT2HKK実験(日韓)とESSνSB実験(スウェーデン)を念頭に置き、主としてθ(23)の八分円縮退が解決できるかを、上述のパラメーター縮退を表す図を用いて議論した。その結果、第一振動最大を観測するT2HK実験とDUNE実験では8分円縮退が解決できるが、第二振動最大を観測するT2HKK実験とESSνSB実験では解決が難しいことがわかった。一般に、第二振動最大付近のみを観測する実験では、第二振動最大のエネルギー付近で(sin2θ(13)**2,1/s(23)**2)平面内の解の1/s**2(23)の値がエネルギーに激しく依存することにより、エネルギーに関して平均化するとθ(23)に関する情報が失われ、八分円縮退の解決が難しくなることがわかった。さらに、(sin2θ(13)**2,1/s(23)**2)平面内における二次曲線は一般に双曲線・放物線・楕円のどれかになるが、どのエネルギー領域で各曲線になるかを、二次曲線の判別式をエネルギーに対してプロットすることにより議論した。結果として、八分円縮退を解決する第一振動最大付近では双曲線、八分円縮退の解決が困難になる第二振動最大付近では双曲線と楕円の間を激しく往復する振る舞いを持つことがわかった。
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