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2021 年度 実施状況報告書

初期宇宙起源の宇宙論的背景重力波検出を目指したデータ解析手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K03580
研究機関日本大学

研究代表者

姫本 宣朗  日本大学, 生産工学部, 教授 (40552352)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード重力波 / データ解析 / 背景重力波 / シューマン共鳴
研究実績の概要

現在、重力波検出器LIGO(米)・Virgo(伊)・KAGRA(日)による3台合同観測や、より高感度な次世代検出器の建造計画など、世界各地で重力波観測の計画が活発に推し進められている。今後の観測対象は、連星合体からの重力波だけにとどまらず、初期宇宙に起源をもつ宇宙全体に一様に存在する重力波(宇宙論的背景重力波)にまで広がっている。しかしながら、検出精度が向上することで逆に、宇宙論的背景重力波の検出を困難にする原理的な問題が浮上する。この問題の原因として挙げられるのが、地球規模で存在する大域磁場や、多数の連星合体からの重力波の重ね合わせによって生じる天体起源的背景重力波の存在である。
特にEinstein Telescopeに代表される第3世代の重力波検出器は、赤方偏移が5以上の中性子星やブラックホール連星系の合体による重力波信号が年間数万検出できると考えられている。これらの重力波による天体起源的背景重力波は,宇宙論的背景重力波の検出にとっては前景となるため、これらを除去するためのデータ解析手法を開発することが必要である。この方法の1つとして、重力波波形のテンプレートを用いて、実データとのフィルタリングを行い、1天体ごとに重力波を取り除いていくことが行われるが、非常に多数の重力波信号が存在するため、重なり合った信号なども想定される。R3年度では,これらの重なり合う重力波信号の頻度を推定し、フィッシャー解析に基づいてそれらが連星系のパラメータ推定に与える影響を定量的に見積もった。その結果は,重なり合った信号も十分に識別することができ,取り除き可能であることを明らかにした。この成果は論文として,Physical Review Dに掲載採択された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、二つの大きなミッションによって成り立っている。一つ目は,重力波検出器間の相関解析で生じる相関ノイズの影響を低減するために、大域磁場に対する重力波検出器の応答特性の理論モデルを構築し、得られた結果と申請者のこれまでの研究による相関ノイズの解析モデルに基づいて、効果的な相関ノイズの低減方法を明らかにすることである。二つ目は、相関ノイズの低減によって検出可能となる天体起源的背景重力波を、宇宙論的背景重力波の前景としてとらえ,それを取り除くことを目的としたデータ解析を構築することである。現在のところ,二つ目の研究に関して,多数の連星系によって重なり合って生じた天体起源的背景重力波の個々の連星系を特定できるかについて,フィッシャー解析に基づいて解析を行い,十分に識別可能であることを定量的に明らかにした。また一つ目の研究についても現在着手中で,その成果について2022年の3月開催の日本物理学会において発表した。以上のことから概ね順調に研究は進んでいる。

今後の研究の推進方策

背景重力波の検出には、複数台の検出器から得られるデータ間で相関を取る相関解析が本質的である。なぜなら、ランダムな位相と非常に小さな振幅をもった重力波が重ね合わさった結果として存在している背景重力波は、特徴的な波形をもたないため、一台の検出器では雑音との区別が原理的に不可能だからである。しかしながら、地球規模で存在する擾乱が重力波検出器に影響を与える場合、十分離れた 2 台の検出器でも、重力波以外の相関が現れ、相関雑音による重力波誤検出を誘発する恐れがある。このような相関雑音の主要な原因の一つが、シューマン共鳴と呼ばれる大域磁場であり、事実、深刻な影響を及ぼす可能性があることがこれまでに報告されている。
R4年度では、シューマン共鳴磁場による相関雑音が背景重力波検出に与える影響について、 フィッシャー解析に基づいて研究を行なっていく。具体的には、過去に申請者が提唱したパラメトライズされた相関雑音のもとで、背景重力波のパラメーターを、相関雑音のモデルパラメーターと同時に推定し、従来通りに、背景重力波の振幅・ベキ指数を制限・推定可能かについて検証していく。またその一方で、相関雑音を無視して背景重力波だけでパラメーター推定を行った場合についても検証し、背景重力波の振幅やベキ指数のベストフィット値がどの程度バイアスされるかついても定量的に明らかにしていく。これらの研究を共同研究者の樽家氏(京都大学基礎物理学研究所)と西澤氏(東大ビッグバンセンター)とともに遂行し,成果が出次第論文にまとめていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度は,京都大学での共同研究者との研究打ち合わせ(2回),岡山理科大学での日本物理学会の発表(オンライン発表に変更)を予定していたが,コロナによる影響で1度だけの京都出張に留まった。また,研究環境を整備するために大型の液晶モニターを購入予定であったが,これもまたコロナの影響による欠品で購入できなかった。次年度は,本年度同様の出張経費を計上し,さらには国際研究交流として台湾への出張も考えている。また,大型液晶モニター購入とともに,データ解析を効率よく行う上で必要なハイスペックのPC(M1 Mac Book pro)も購入予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Impacts of overlapping gravitational-wave signals on the parameter estimation: Toward the search for cosmological backgrounds2021

    • 著者名/発表者名
      Himemoto Yoshiaki、Nishizawa Atsushi、Taruya Atsushi
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 104 ページ: 044010-1-13

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.104.044010

    • 査読あり
  • [学会発表] シューマン共鳴磁場による相関雑音を考慮した背景重力波のパラメーター推定2022

    • 著者名/発表者名
      姫本 宣朗
    • 学会等名
      日本物理学会第77回年次大会

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公開日: 2022-12-28  

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