研究課題/領域番号 |
21K03583
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
大熊 一正 岡山理科大学, 基盤教育センター, 教授 (80367507)
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研究分担者 |
長尾 桂子 岡山理科大学, 理学部, 講師 (90707986)
植田 高寛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50469871)
馬渡 健太郎 岩手大学, 教育学部, 准教授 (90814096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トップクォーク / FCNC / レプトンコライダー |
研究実績の概要 |
トップクォークは,生成後,ハドロンになることなく,すぐに崩壊する.このため,そのレプトニック崩壊を観測すれば,非摂動効果の影響をほぼ受けることがない.つまり,トップクォークのレプトニック崩壊をレプトンコライダーで観測できれば,既存のハドロンコライダーよりも,より不定性の少ない環境下で,トップクォークの性質を高精度で観測できると期待できる.そこで,本研究課題では,現在計画されている複数のレプトンコライダーにおいて,トップクォークのFlavor-changing neutral current(FCNC)の存在を確認できるかを調査する.ここで着目するFCNCは,素粒子物理学の標準模型の枠組みでは,観測が不可能なほど抑制されている.このため,もしFCNCの存在を示す現象が観測ができれば,それは,直ちに標準模型を超えた物理の存在を示唆し,素粒子物理学分野において,長年探し続けている新物理の証拠となる. 今年度は,日本でその建築が計画されているInternational Linear Collider(ILC)を念頭に置き,その稼働開始時の計画目標である電子‐陽電子が重心系の衝突エネルギー250GeVで衝突する場合を想定し,トップクォークFCNC結合の観測可能性,及びそれらの結合定数の制限について,シミレーションソフトを利用して調査した.まず,標準模型の枠組みでも,重心系の衝突エネルギーが250GeVあれば,トップクォークの単生成が可能であることを鑑み,積分ルミノシティが1ab^-1程度(ILC250で目標とされている積分ルミノシティ)では,トップクォークが観測されないであろうことを確認した.現在は,標準模型を超える物理として,標準模型を有効場の理論に基づいて拡張したラグランジアンを利用したシミレーションを実施し,その拡張に対する制限及び拡張による新しい現象の観測可能性を調査中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
使用しているシミレーションソフトウエアのバージョンアップ等で,シミレーションをうまく実行できない期間が生じてしまった.現在では,有識者及び共同研究者のアドバイス等で,問題を克服できたが,解決に思いの外時間を要してしまったため.
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今後の研究の推進方策 |
使用するシミレーションソフトが問題なく使用できるようになったので,研究対象としてる物理過程(電子・陽電子衝突からのFCNCを通じたトップクォークとチャームクォーク生成等)のシミレーションを行い,トップクォークのFCNC結合に対する解析を進める.また,解析に際しては,従来の運動量等の制限によるイベント選択だけではく,機械学習も踏まえたイベント選択も試み,制限の向上を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初は,2年目から海外での国際会議へ参加する予定であった.しかしながら,コロナ禍の収束状況と本務大学の業務及び研究の進行具合の兼ね合いで,国際会議に参加できなかった.このため,旅費が多く残ってしまった.次年度は,新型コロナウイルスの感染状況を踏まえつつ,国際会議に参加し,繰り越した旅費も無理のない程度で使用する予定である.
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