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2021 年度 実施状況報告書

高精度エアロゲルチェレンコフイメージングによる銀河宇宙線伝播モデルの精密検証

研究課題

研究課題/領域番号 21K03584
研究機関千葉大学

研究代表者

田端 誠  千葉大学, 大学院理学研究院, 特任研究員 (10573280)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードシリカエアロゲル / チェレンコフ検出器 / 宇宙線
研究実績の概要

銀河宇宙線伝播機構に関する理論モデルに強い制限を与えるため、核子あたり1~10GeVの高エネルギー宇宙線の軽元素同位体存在比(特にBe-10/Be-9)のエネルギー依存性を、長期気球搭載の荷電粒子測定システムにより高統計・精密測定することを計画している。宇宙線粒子の速度の精密測定を通してその質量を4σ以上の分解能で割り出し、同位体核種を同定することを目指している。速度測定のためにリングイメージングチェレンコフ検出器を導入し、チェレンコフ輻射体として屈折率を調節できるシリカエアロゲルを採用する。先行研究では屈折率1.15のエアロゲルを実装したが、幅広いエネルギー領域に対応するために屈折率1.03のエアロゲルを新規に開発し、追加実装する計画である。
研究初年度である本年度は、計画通り屈折率1.03のエアロゲルを試作した。予備研究では波長400nmにおいて透過長50mmを得ていたが、本年度の試作において透過長を60~70mmまで向上させることに成功した。これは湿潤ゲル合成の試薬配合比、熟成条件、および湿潤ゲルを超臨界乾燥する際の温度・圧力の制御パターンなどの製作パラメータの調節・最適化研究によるものである。また、最適化された製作手順を順守することにより、屈折率を安定的に制御できることも確認した。屈折率1.03のエアロゲルは、1.15に比べてチェレンコフ発光量が5分の1程度に減るだけでなく、上流に配置する1.15のエアロゲルからのチェレンコフ光が低減衰で透過できるように高い透明度をもつことが要求される。目標としていた透過長70mmをほぼ達成し、測定システムへの実装の実現性が高まった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は屈折率1.03のエアロゲルを試作した上で、タイルの一様性をはじめとする光学性能の評価手法を確立することを計画していた。エアロゲルの試作結果は良好であったが、チェレンコフ輻射体としてのより実践的な性能評価システムの構築は遅れている。これは、予期せずエアロゲルの製造・開発設備を移設する必要が生じ、移設後の装置の許認可や健全性の確認などにも時間を要し、試作が遅れたためである。しかし、移設後はエアロゲルの製作だけでなく、基本的な光学性能の測定を機能的に集約された設備で行えるようになったため、次年度以降の開発や量産はより効率的に進められると考えている。

今後の研究の推進方策

今後はまず、チェレンコフ輻射体としてのエアロゲルをより実践的に性能評価するための測定システムの構築に注力する。また、屈折率1.03のエアロゲルについて、継続的に透過長70mmを超えたタイルを歩留まり良く製造できるかどうかを調査する。これらの評価結果と、先行研究で開発した屈折率1.15のエアロゲルの運用からのフィードバックを包括的に考察し、エアロゲルの大きさや厚さを含めたスペックと量産施策を決定する。長期気球フライト実験の実施機会の獲得状況も考慮しながら、追加実装するエアロゲルを移設した製造設備において効率的に量産することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

不可避的な製造設備の移設に時間を要し、初年度のエアロゲルの試作に遅れが生じたため、続いて予定していた実践的性能評価システムの構築が完了しなかった。このシステム構築に要する経費は次年度に使用することとする。一方、エアロゲルのさらなる開発・量産については、設備移設後は従前より効率的に進められると見込んでおり、第二年度の研究計画は予定通り実施する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Queen's University/McGill University(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      Queen's University/McGill University
  • [国際共同研究] University of Chicago(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Chicago
  • [雑誌論文] Calibration of Aerogel Tiles for the HELIX-RICH Detector2021

    • 著者名/発表者名
      P.Allison, J.J.Beatty, L.Beaufore, Y.Chen, S.Coutu, E.Ellingwood, M.Gebhard, N.Green, D.Hanna, B.Kunkler, I.Mognet, R.Mbarek, K.McBride, K.Michaels, D.Muller, J.Musser, S.Nutter, S.O'Brien*, N.Park, T.Rosin, E.Schreyer, G.Tarle, M.Tabata, A.Tomasch, G.Visser, S.P.Wakely, T.Werner, I.Wisher, M.Yu
    • 雑誌名

      Proceedings of Science

      巻: 395 ページ: 090

    • DOI

      10.22323/1.395.0090

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Cosmic-ray isotope measurements with HELIX2021

    • 著者名/発表者名
      P.Allison, J.J.Beatty, L.Beaufore, Y.Chen, S.Coutu, M.Gebhard, N.Green, D.Hanna, H.B. Jeon, B.Kunkler, M.Lang, R.Mbarek, K.McBride, I.Mognet, D.Muller, J.Musser, S.Nutter, S.O'Brien, N.Park*, Z.Siegel, M.Tabata, G.Tarle, G.Visser, S.P.Wakely, M.Yu
    • 雑誌名

      Proceedings of Science

      巻: 395 ページ: 091

    • DOI

      10.22323/1.395.0091

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] High-quality aerogel Cherenkov radiators recently developed in Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Makoto Tabata
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: - ページ: -

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] High-quality aerogel Cherenkov radiators recently developed in Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Makoto Tabata
    • 学会等名
      5th International Conference on Technology and Instrumentation in Particle Physics (TIPP2021)
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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