研究課題/領域番号 |
21K03584
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田端 誠 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任研究員 (10573280)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シリカエアロゲル / チェレンコフ検出器 / 宇宙線 |
研究実績の概要 |
高屈折率(高密度)のエアロゲルタイルは低密度のものに比して巨視的な柔軟性に乏しいため衝撃で割れやすい。第一回目の気球飛翔に向けた測定器には既に屈折率1.15のエアロゲルを実装しているが、宇宙線観測後の気球着地の衝撃で破損が生じることも想定されるため第二回目の気球飛翔の機会に向けて測定器の迅速な再整備への準備が必要である。高屈折率のエアロゲルは一度の製作にこれまで数ヵ月を要したが、研究二年度目は蒸気圧が大きい溶媒を利用して高屈折率のエアロゲルの製作期間を短縮することを試みた結果、試作タイルの基本的な光学性能は概ね良好であった。より詳細な評価を実施し、要求性能を満たすよう必要に応じて製法にさらなる改善を加えることで、製作期間縮減による効率的な開発と製造コストの削減につなげる。 高エネルギー領域に対応するために新規開発により追加実装する計画である屈折率1.03のエアロゲルの試作では研究初年度に高い透明度を達成していた。二年度目に実施した量産に向けた大型タイルの試作において、屈折率が高い側へのずれる事象と付随する透明度の低下が見られた。これは製造過程における意図しない体積の収縮が主な原因と考えられ、収縮がどのように生じているかを確認するため一連の再現実験を行った。製造手順における物理化学的パラメータの変化に応じて仕上がるエアロゲルの物性がどのように応答するかを追跡し、各種パラメータの相関についての理解が深まった。要求性能に対して歩留まり良く製作することに道筋が立つとともに、1.02や1.04のような近しい屈折率の開発に対しての波及効果も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように屈折率1.03の大型エアロゲルタイルの量産を視野に入れた試作において、要求性能に対する歩留まりなどに懸念が生じた。製作手法や手順を精査しながら改善研究を実施しているためやや遅れが生じているが、次年度以降、より品質の安定したエアロゲルを歩留まり良く製造できると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
溶媒置換による高屈折率(1.15 前後)のエアロゲルの製作期間縮減の研究を引き続き進め、屈折率制御の精度を高める。要求性能を満たすタイルの製造歩留まり率を計測し、高屈折率エアロゲルの再整備手順を確立する。屈折率1.03のエアロゲルについても、製造手法の各種パラメータ調整しながら、それらがエアロゲルの物性へ与える影響を継続して調査する。大型タイルの品質を維持しながら生産性を高めるとともに、光学性能を損なうことなくタイルサイズを調整する手法を開発する。より詳細な性能評価に対応できるように既存の光学的測定システムを増強し、新規開発エアロゲルの物性データを実測する。取得したエアロゲル特性データのアーカイブを作成し、宇宙線観測データの物理解析に応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
製造技術上の課題を精査するために大型エアロゲルサンプルの製作を見送った。そのため原料試薬などの調達費用を次年度使用する。また、新規開発エアロゲルサンプルを詳細に性能評価するシステムも拡張の過程にあるため器具・機材の購入費を次年度使用する。査読論文等の成果取りまとめに要する経費も使用を計画している。
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