研究課題
本研究は、南極長期周回気球に搭載する一次宇宙線測定器により、主にベリリウムの同位体比を精密測定し(HELIX実験)、宇宙線の伝播機構の理論モデルを検証することを最終的な物理目的とする。本申請課題では、宇宙線荷電粒子の速度測定装置であるリングイメージングチェレンコフ検出器において、屈折率が1.15や1.03の疎水性シリカエアロゲルのタイル用いた輻射体システムの開発に重点的に取り組む計画である。最終年度には初回気球飛翔機会に向けた量産タイルに対し、光学ベンチにおける可視光レベルの測定に加え、加速器ビームを用いたチェレンコフ角の直接測定も実施し、総合的な性能評価の結果を学術論文として出版した。取得したエアロゲル特性データのアーカイブは宇宙線観測データの物理解析に利用できる。また、溶媒置換による高屈折率(1.15 前後)のエアロゲルの製法を用い、屈折率制御の精度を高めると同時にタイルのひび割れ歩留まり率を改善した。これにより2回目以降の気球飛翔機会に向けてエアロゲルの整備手順を再確立できた。屈折率1.03のエアロゲルについても、製造手法の各種パラメータ(薬品配合、温度、圧力など)を調整しながら、それらがエアロゲルの物性へ与える影響を継続して調査した。品質を維持した大型タイルの生産性が高まり、鋳型の成形法を見直すことにより光学性能を損なうことなくタイルサイズを微調整できるようになった。また、屈折率1.025~1.04の範囲でも透明度が向上し、特に屈折率1.04ではこれまでよりも厚いタイルを歩留まり良く製造できるようになった。昨今の世界情勢により南極での気球飛翔機会を行使できない中、現在HELIX実験は屈折率1.15のエアロゲルを実装した測定器を北欧スウェーデンにおいて調整中であり、まずは今夏以降の北極域での飛翔機会を得ようと準備を進めている。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 5件)
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