研究課題/領域番号 |
21K03586
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平出 克樹 東京大学, 宇宙線研究所, 特任准教授 (10584261)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 表面アルファ検出器 / 宇宙素粒子実験 / 極低バックグラウンド |
研究実績の概要 |
宇宙に大量に存在する暗黒物質と通常の物質との反応を検出しようとする暗黒物質直接探索実験や、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索実験など、ごく稀な現象を探索する宇宙素粒子実験において、検出器を構成する部材の表面に付着している210Poなどのラドン娘核による表面バックグラウンド事象の低減は共通の課題である。本研究の目的は、次世代の極低放射性バックグラウンド宇宙素粒子検出器の開発を見据えて、現行の極低放射性バックグラウンド表面アルファ検出器のバックグラウンドをハードウェアおよびソフトウェアの両面の改善により1桁以上低減し、部材表面の210Po量に対する感度を0.1 mBq/m2以下まで高めることである。また、表面アルファ検出性能を詳細に検証し、測定方法の改善を行う。
2021年度は、まず、現行の表面アルファ検出器のバックグラウンド源を理解するために、サンプルトレイ等の各種条件を変えながらバックグランド測定を行ってきた。また、これまで測定が難しかった絶縁体サンプルについては、これまでの測定方法の改善策を検討し調査を行ってきた。さらに、これまでは約3週間に一度の頻度で液化アルゴンボトルを交換する際に2日間測定を中断する必要があったが、液化アルゴンボトルの交換作業中でも測定を継続できるようにアルゴンガス配管の改造を行った。その結果、バックグラウンド源を理解するために必要な長期測定が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハードウェア面でのバックグランドの低減については、当初予定していた計画に比べやや遅れ気味であるが、当初は2年目以降に行う予定であった絶縁体サンプルの測定方法の改善策の検討を前倒しして並行して進めるなど計画を柔軟に変更できたため。
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今後の研究の推進方策 |
ステンレスや無酸素銅などの金属表面に付着したラドン娘核を削減する研究は既に行われており、電解研磨により金属表面をO(10) μm削り落とすことが有効な方法であることが分かっている。そこで、サンプルトレイやガス配管などに電解研磨を施して、これらの部材起因の背景事象を1/10以下に低減することを目指す。ハードウェアの改善と並行して、ソフトウェアによる背景事象の識別・除去を試みる。本研究では、波形情報に立ち戻って機械学習を用いることで事象のサンプルトレイ上の2次元位置再構成を試みる。再構成された位置情報を用いて、事象が測定サンプル起因かサンプルトレイ起因かを識別して背景事象を除去できるほか、サンプルが局所的に汚染されていないかなどの検証ができる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
表面アルファ検出器の運転を一時中断して、サンプルトレイやガス配管などに電解研磨を施す計画であったが、別の測定のために検出器を連続運転する必要が生じたために本計画を延期した。
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