宇宙に大量に存在する暗黒物質と通常の物質との反応を検出しようとする暗黒物質直接探索実験や、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索実験など、ごく稀な現象を探索する宇宙素粒子実験において、検出器を構成する部材の表面に付着している210Poなどのラドン娘核による表面バックグラウンド事象の低減は共通の課題である。本研究の目的は、次世代の極低放射性バックグラウンド宇宙素粒子検出器の開発を見据えて、現行の極低放射性バックグラウンド表面アルファ検出器のバックグラウンドをハードウェアおよびソフトウェアの両面の改善により1桁以上低減し、部材表面の210Po量に対する感度を0.1 mBq/m2以下まで高めることである。また、表面アルファ検出性能を詳細に検証し、測定方法の改善を行う。
これまでは約3週間に一度の頻度で液化アルゴンボトルを交換する際に2日間測定を中断する必要があったが、液化アルゴンボトルの交換作業中でも測定を継続できるようにアルゴンガス配管の改造を行った。その結果、バックグラウンド源を理解するために必要な長期測定が可能となった。
最終年度も引き続き、これまで測定が難しかった絶縁体サンプルに関して、これまでの測定方法の改善の研究を行った。その中でも、特に絶縁体サンプルが帯電していると観測されるアルファ線のエネルギースペクトルに歪みが生じて正確な測定が行えないため、測定前の絶縁体サンプルの除電方法に焦点を当てて、効果的な除電方法の検討および調査を行った。また、現行の表面アルファ検出器のバックグラウンド源を理解するために、サンプルトレイ等の各種条件を変えながらバックグランドレートやエネルギースペクトルの安定性等の調査およびソフトウェア面での改善を試みた。
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