研究課題/領域番号 |
21K03588
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
南野 彰宏 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70511674)
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研究分担者 |
木河 達也 京都大学, 理学研究科, 助教 (60823408)
清矢 良浩 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80251031)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 加速器ニュートリノ / 物質優勢宇宙 / CP対称性の破れ / 前置ニュートリノ検出器 |
研究実績の概要 |
現在の宇宙は粒子のみが存在し反粒子がほとんど存在しない物質優勢宇宙であるが、これを実現するメカニズムは明らかになっていない。ニュートリノで粒子・反粒子の対称性(以後CP対称性)が破れていると、上記の物質優勢宇宙が実現される可能性がある。T2K実験は、データを増やし、測定精度を上げることで、99.7%の信頼度でCP対称性の破れを示すことを目指している。本研究では、T2K実験の測定精度向上の鍵となる「ニュートリノと標的原子核の反応断面積の精密測定」を、新型前置ニュートリノ検出器WAGASCIを用いて行う。WAGASCIと既存の前置ニュートリノ検出器ND280は、ビーム軸に対して異なった位置に設置されているため、異なったニュートリノエネルギー分布を持つ。そのため、2つの検出器のエネルギー分布を差し引きすることで、より単一エネルギーに近い環境でニュートリノ反応断面積の測定が可能になる。本研究では、原子核内での終状態反応後にミューオンが観測される荷電カレント反応(Charged Current反応(以後CC反応))のうち、荷電パイオンが観測されないCC0パイオンモード、荷電パイオンが1つ観測されるCC1パイオンモードの反応断面積測定を行う。この2つの反応モードは 、T2K実験のニュートリノエネルギー領域で支配的な反応モードである荷電カレント擬弾性散乱と荷電カレントパイオン生成反応に深く関係しており、ニュートリノ反応の理論モデルとの比較に適している。 2021年度の成果は以下のとおりである。 (1) WAGASCI complexによる2021年3月から4月のニュートリノビームデータ収集を成功させた。 (2) WAGASCI complex単独での水標的およびCH標的に対するCC0パイオン反応の解析を進め、解析フレームワークの大部分を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年3月から4月のニュートリノビーム収集で判明したハードウェア問題を解決することを優先したため、WAGASCI complex単独での水標的およびCH標的に対するCC0パイオン反応の解析を2021年度中に完了することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究実施計画を以下にまとめる。 (1) ニュートリノビームデータ収集: ニュートリノビームデータを収集を継続して行い、WAGASCI検出器の水標的中で期待されるニュートリノ反応数を約24000事象まで増やす。 (2) ニュートリノ反応断面積測定: 2022年度にWAGASCI complex単独でのCC0パイオン反応測定を完了させる。2023 年度にWAGASCI complex単独でのCC1パイオン反応測定とWAGASCI complexとND280の統合解析による狭いニュートリノエネルギー幅でのCC0パイオン反応およびCC1パイオン反応測定を完了させる。上記の測定結果はすべて学術論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で参加した学会や研究会の多くがオンラインで行われ実験サイトであるJ-PARCへの出張も大幅に減ったため、主に旅費として計上していた費用に次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、2021年度のニュートリノビームデータ収集で明らかになったハードウェアの問題を解決するための物品購入に使用する予定である。
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