LHC-ATLAS実験における陽子陽子衝突で発生するミュー粒子をミュー粒子トリガー検出器を用いて通過位置を検出し,その情報を用いて事象選択を行うトリガーアルゴリズムの開発を行う。従来のトリガーアルゴリズムでは選択することができない事象,特に,標準模型を超える物理に現れる,陽子陽子衝突点から離れた位置で崩壊する長寿命粒子(Long lived particle; LLP)から生成したミュー粒子を含む事象に対するトリガー効率の向上を目的としている。 ATLAS実験の従来のミュー粒子トリガーアルゴリズムをLLPを検出できるように拡張した場合,LLPの検出効率が10倍以上向上したが,高輝度LHCでの実験におけるトリガーレートを推測したところ,トリガーレートに要求される条件を満足できないことを確認した。 この結果をふまえ,Convolutional Neural Network(CNN)やGraph Neural Network(GNN)をベースとした機械学習モデルを用いたミュー粒子トリガーの開発を行った。同じ機械学習モデルを,CPU,GPU,FPGA上で動作させることが可能であり,それぞれのテクノロジーでのトリガー性能の評価だけでなく、動作時間や消費電力など,実用に際して考慮すべき性能の評価も行った。 機械学習モデルの開発は,ATLAS実験のシミュレーションデータ及び実データを用い,CPU上で行った。CPU上で開発したモデルをNVIDIA社製GPUを搭載、または、Xilinx社製FPGAを搭載したアクセラレータ上で動作させ,性能評価を行った。FPGA搭載アクセラレータへの実装にはXilinx社が提供している機械学習用フレームワークであるVitis AIを用いた。Vitis AIはCNNに対応しているため、CNNをベースにした機械学習モデルを実装して、動作確認および性能評価を行った。
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