研究課題/領域番号 |
21K03596
|
研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
水村 好貴 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (40711982)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 宇宙線 / ガンマ線カメラ / 電子・陽電子対生成 |
研究実績の概要 |
本研究は,低エネルギー宇宙線の起源を解明するため,宇宙線と星間物質の相互作用で生ずるC-12およびO-16からの脱励起ガンマ線(4.44 MeVおよび6.13 MeV)の銀河面マップを作成し,評価することで低エネルギー宇宙線の存在現場を特定する研究である。近年のX線観測では超新星残骸等で宇宙線密度が1桁程度高いことが示唆されており,この示唆結果と相補的な手段による本研究での確認が期待されている。 2018年に豪州で高度40 kmに気球飛翔したSMILE-2+実験のフライトデータが存在し,本研究ではこのデータでまだ十分な解析が行われていない電子・陽電子対生成事象について,その解析方法の構築・評価から行い,数MeV帯域のガンマ線マップを得て,局所的でない大局的な低エネルギー宇宙線の起源について解明を目指している。本研究の副産物としての将来計画への解析手法の応用も期待でき,従来は雑音となる事象を用いてその精細な特性を解析することから,既存解析手法の感度向上への寄与も期待される。解析手段として原子核・素粒子実験分野で古くから用いられているHough変換を用いた手法を適用し,早期の成果創出を行ため,計算環境の構築と,電子・陽電子対生成事象の候補イベントにHough変換を適用するための基礎的な情報収集および解析コードの試作・開発,その候補事象の選別能力や解析コードによる事象再構成の精度を評価するために必要なシミュレーションの開発を継続して進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
電子・陽電子対生成事象の候補イベントにHough変換を適用するための基礎的な解析コードの開発と,その候補事象の選別能力や解析コードによる事象再構成の精度を評価するために必要なシミュレーションの開発を進めているが,その特性評価および再構成性能の評価はまだ十分ではなく,本格的な解析に至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
解析手法の評価を進めるために,ガンマ線入射による電子・陽電子対生成事象のシミュレーションのみでなく,対象観測エネルギー帯域外のガンマ線や宇宙線トリガー事象のシミュレーションを進める。再構成精度を評価しつつトレードオフを考慮した解析条件を検証し,フライトデータでの銀河面マップの描画を行い,低エネルギー宇宙線の起源の議論を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
近隣分野の専門家との議論をより有意義なものとするため,解析手法の評価が一定程度できた段階での成果発表および議論を行うこととした。全体的に研究計画が遅れていることは否めず,物品費・旅費を中心として残額が発生した。この予算は次年度に回し適切なタイミングで研究・議論を加速度的に進めるために用いることとした。
|