レーザー干渉計型重力波検出器は、感度を向上させるためにレーザーを高出力化する。しかし、重力波信号を含む光干渉信号を受光する際の直流での光パワーが大きくなり、受光素子の損傷や今後の重力波検出器のさらなる感度向上に課題を抱えている。地上に建設されている重力波検出器は、10Hz~1kHz程度の交流の重力波信号であることに着目し、レーザー干渉計の光干渉信号を電気信号に変換する光検出器において、従来の光の直流検出+電気的なAC結合ではなく、光共振器の反射光のフィルタ効果を利用した「光AC結合」による干渉計の信号検出方法を提案した。本研究では、本手法の原理の検証のために、実験室で75 cmの大きさのマイケルソン干渉計を構築し、レーザー干渉計における光AC結合による低ショット雑音の信号取得の手法を確立し、大型重力波望遠鏡への応用可能性を見出す。 今年度は、昨年度までに製作した3種類の光共振器を組み合わせたマイケルソン干渉計の装置の評価、とくに重力波に対する雑音に対する性能の評価を行った。まず、使用したレーザーパワー10mWに対し、光AC結合によって、干渉計信号の直流での受光量を1/100程度に低減させた。その結果、光検出器の雑音レベル限界の感度が実現した。そのため、今後の戦略として、レーザーパワーを1W以上に増やすこと、光検出器の高速かつ高感度化、が必要であることを見出した。光検出器については、よりも高速かつ高感度化を実現するトランスインピーダンスアンプの評価を進めた。レーザーパワーの増強については、本課題の予算規模では導入できないため、今後の展開へとつなげることとし、本研究提案での原理の検証は十分に達成したと考えており、実際の重力波検出器での受光パワーレベルでの試験の準備が整ったといえる。
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