研究課題/領域番号 |
21K03609
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
渡辺 丈晃 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (00415043)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 金属3Dプリンター / 金属積層造形法 / タングステン / 2次粒子生成標的 |
研究実績の概要 |
金属3Dプリンター(金属積層造形法)による純タングステン製2次粒子生成標的の製作可能性の検証のため、2021年度は:1.金属3Dプリンター用に調整された専用の純タングステン素材を調達、2.最も普及している金属3Dプリンターの1つであるパウダーベッド方式(レーザー照射型)により純タングステンの積層造形が可能であることを確認、3.基礎的な特性評価のため機械強度測定のための試験片(引張試験片等)を金属3Dプリンターにより製作。4.金属積層造形法に特有な造形材の脆弱性を改善可能かどうかを検証するため、3で製作した試験片の一部についてHIP(熱間等方圧加圧法)処理を実施。 以上を通じ、専用素材の調達から製作方法までの基礎的な知見を得ることに成功し、本研究の最も重要な検証項目の1つである機械強度測定の最初の試行準備完了に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はタングステンを金属3Dプリンターで製作対応しているメーカとの協力関係を構築し、素材の調達から試験片の作成まで成功するに至り、全体として順調に進められていると考えている。当初計画との違いは、当初は造形能力(複雑な形状の製作能力)の確認として標的で使用するフィン形状の造形テストを先に実施する予定であったが、タングステンがそもそも高融点金属のため3Dプリンターによる造形が難しい金属であり、製造実績も少なく、機械強度などの基礎的な知見が十分に明らかにされていないことがわかった。そのため、造形テストより先に基礎特性として機械強度や物性値の評価を行うよう実施順序を入れ替えた。あわせて強度改善の可能性の検証のため熱間等方圧加圧法(HIP処理)も試験片の一部に施行し、2021年度内に評価準備まで完了に至った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に製作した機械強度試験片の評価を行い、今回の製作条件によるタングステン素材の機械強度および物性を明らかとする。それと並行し、標的で使用するフィン形状の造形テストを実施し、両方の結果をもって、2次粒子生成標的へ適用可能性の評価を実施する計画である。ただし、強度評価で予期せぬ問題(想定よりも強度が低いケース等)が発生した場合は、製作方法を変更(改善)してからの強度の再評価を造形テストより優先する可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では新しい製造方法(金属3Dプリンター)によるタングステン製作を行っているものであるが、これまで製作実績も少なく、高融点金属特有の難しさから、素材製造から評価試験片の製作まで各工程で通常より時間を要するものである。そのため、試験片の製作までを2021年度に完了したが、評価試験までを含めるのが困難であったため、その分が次年度使用となったものである。
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