研究課題
全天X線監視装置 MAXI の突発天体発見システムにより検出されたブラックホール天体 GRS 1739-278, XTE J1856+053 の再活動を The Astronomer's Telegram (以下 ATel) を介して世界に先駆け報告した (それぞれ ATel. No. 16097, 16131)。本報告により、天体の同定と追観測が多数の他衛星(装置)により行われた。本研究においては、同一天体でのアウトバーストごとの特徴の違いを比較することも重要であり、本発見により、より多くのブラックホール天体のサンプルを増やすことができた。また、ブラックホール周辺に形成される降着円盤の状態変化などもブラックホールに降着するガスの質量を見積もる上で重要なパラメータであり、本研究での天体質量の見積もりにも直接影響する。そこで MAXI が増光などを検出した、ブラックホール(候補)天体 AT 2019wey (ATel No. 16197) , Swift J1753.5-0127 (ATel No. 16283), GX 339-4 (ATel 16302, 16424) の状態変化などについても ATel に報告して追観測を促した。これら以外に、2023年度中に他衛星等により先に発見された新天体 Swift J1727.8-1613 (ATel No. 16205), Swift J1922.7-1716, SRGA J144459.2-604207 (ATel No. 16483) の MAXI のデータを用いた解析を行い、先に発見できなかった原因の解明とともにこれら天体の特徴を調べた。これらの ATel に報告した内容を中心に、2023 年秋と2024 年春に行われた日本天文学会の年会で MAXI チームを代表して報告した。また、2022年に発見された MAXI J0655-013 の NuSTAR 衛星のデータを用いた詳細な解析結果等を含む、計3つ査読論文の共著となり、論文発表した。
3: やや遅れている
2018 年に発見された MAXI J1631-479 に関する論文のほか、2編の共著論文の準備に研究時間の多くを割いた(2024年度に発表予定)。また、MAXI が発見した天体以外の突発天体(Swift J1727.8-1613, SRGA J144459.2-604207, Swift J1922.7-1716)のデータ解析を行い、MAXI が先立って発見できなかった原因を含め、その解析に時間を要した。そのため、これまで観測された多くの天体データをまとめる作業に遅れが生じている。
MAXI J1631-479 の論文発表を小林浩平らと行い、そこで用いられたデータ解析手法を用いて、種々の天体の特徴を調べ検討を行う。また、2023年度に出現した新天体の発見が他の衛星より遅れてしまった主な原因は、新天体が明る天体近くで出現したためであるが、そのような場合でもより正しく発見検出できるように、MAXI GSC 検出器の点拡がり関数の影響を再考する。また、2024年の7月に韓国で行われる COSPAR 会議で MAXI の最近の成果等を発表予定である。
2023年度は、本研究を発表するに適した国際会議が開かれず、旅費に残額が生じた。また、計算機の価格が高騰したため、必要とされる性能の計算機が購入できなかった。2024 年度に配分される予算と合わせて、必要な計算機を 2024 年度に購入予定である。また、7月に韓国で開催される COSPAR 会議を含め、2度の海外渡航を計画している。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 76 ページ: 251~264
10.1093/pasj/psae005
The Astrophysical Journal
巻: 954 ページ: 48~48
10.3847/1538-4357/ace696
Progress of Theoretical and Experimental Physics
巻: 2023 ページ: 1~83
10.1093/ptep/ptab042
The Astronomer's Telegram
巻: 16097 ページ: 1~1
巻: 16131 ページ: 1~1
巻: 16205 ページ: 1~1