研究課題/領域番号 |
21K03621
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松井 秀徳 旭川工業高等専門学校, 人文理数総合科, 准教授 (90634428)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 銀河形成 / 星団 / 活動銀河核 / 天の川銀河 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、衛星銀河の衝突が引き起こす天の川銀河の進化を明らかにすることにある。具体的には、シミュレーションコードASURAを用いて「天の川銀河円盤への衛星銀河衝突」の高分解能シミュレーションをおこなうことで、「厚い円盤」「薄い円盤」の形成メカニズム(幾何学的性質や金属組成の違いの解明)や、衝突時に形成される星団形成やその性質(複数世代の星で構成される星団の形成メカニズム)を明らかにする。 本年度は、衛星銀河の衝突前における天の川銀河孤立系円盤の進化についての研究をすすめた。具体的には、天の川銀河ポテンシャル中でのガス運動を高分解能シミュレーションをおこなった。ここで、天の川銀河ポテンシャルとして、非軸対称成分である棒状ポテンシャルも考慮している。その結果、棒状ポテンシャルによって銀河中心から数kpcのところに、ガスがリング状に集められることが明らかになった。この構造は、天の川銀河の観測から示唆されているcentral molecular zone(CMZ)に対応すると考えられる。このガスリングでは、x1-orbitからのガス供給が定常的に起こり、星形成や星団形成が起こることが明らかになった。また、ガスリング中のガスcloud同士の衝突などの相互作用によって、角運動量を失ったガスの塊が銀河中心に落ちることで、銀河中心へのガス供給が引き起こされることが示された。この銀河中心へのガス供給は、ガスの塊によって引き起こされるため、ガス供給は定常的というよりはむしろ散発的に起こることが明らかになった。これらのガス供給は、天の川銀河中心にある大質量ブラックホールの成長や活動性にとって極めて重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最大の目的は、「天の川銀河への衛星銀河の衝突シミュレーションをおこなうことによって、衛星銀河衝突が引き起こす天の川銀河の進化を解明すること」になるが、まだそのシミュレーションには至っていない。しかしながら、衛星銀河衝突前の天の川銀河の進化についてのシミュレーションを進めることはできた。そして、シミュレーションデータの解析の結果、銀河中心へのガス供給やcentral molecular zoneにおける星団形成について明らかにすることができ、これらの研究成果を学術論文や研究会にて発信する段階にきている。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、天の川銀河円盤への衛星銀河の衝突前の孤立系円盤での進化を明らかにすることができた。まずはこれらの成果を学術論文としてまとめていく。その後、天の川銀河円盤への衛星銀河の衝突シミュレーションを実行していく。そして、天の川銀河円盤の進化、具体的には「厚い円盤」「薄い円盤」の起源の解明や、衝突時に形成した星団の性質について明らかにしていく。そして、観測との比較を通し、天の川銀河の形成、その他の円盤銀河の形成メカニズムについて解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、研究打ち合わせのための国内・海外出張や国内・海外における研究会の参加を予定していたが、コロナ禍にあるためこれらの活動を自粛した。やむを得ず、その代わりとなるオンラインでの打ち合わせを実施し、研究を進めてきた。次年度は、国内外移動での隔離が緩和されることが期待されており、既に2つの国際会議、2つの国内研究会(日本天文学会年会)での発表を予定している。また、国内での打ち合わせのための出張も予定している。当該年度に使用できなかった予算は、これらにあてる予定である。
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