研究実績の概要 |
中性子星(NS)の磁場を理解する鍵となるのが、強い磁場をもち磁気エネルギーでX線を放射する一群のNS、「マグネター」である。我々は2例のマグネターで、周期的なX線パルスが長い周期で進み遅れする「位相変調」現象を発見した。これは内部に潜む強いトロイダル磁場がNSを変形させ、自由歳差運動が起きた結果と解釈され、位相変調の起き方から、この2天体の内部に、10の16乗ガウスの超強トロイダル磁場が潜むことが示された。本研究では、より多くのマグネターからこの現象を検出し、トロイダル磁場の推定を目指した。 「すざく」 、その先代「あすか」、およびNuSTAR衛星の公開データを解析した結果、代表的なマグネターSGR1900+14とSGR1806-20から位相変調を検出し、論文として出版公表できた。さらに3つのマグネター1E 1841-045, SGR 0501+4516、および RXJ1708-4009からも同様な現象が検出できた(論文は投稿直前)。こうして位相変調を示すマグネターの個数は7個へ急増し、この現象がマグネターに共通すること、それらの内部には普遍的に10の16乗ガウスの超強磁場が潜もことが、明らかになった。 上記7天体につき、推定されたトロイダル磁場の強度を双極子磁場の強度で割ったところ、老齢のマグネターほどその比が大きいことを発見した (論文は投稿準備中)。これはマグネターの双極子磁場は速く減衰するが、トロイダル磁場はより長く保たれることを意味し、ある種の中性子星種族の存在を自然に説明できる。さらに「あすか」衛星のデータを用い、ガンマ線連星 LS 5039から約9秒のX線パルスを追認できた。これは「すざく」とNuSTARのデータで示唆されたパルスを確定的なものとし、この天体が連星中のマグネターであるという描像を強める結果である。 本研究では、計9編の英文論文を出版できた。うち8編が査読付き、6編が研究代表者による主著論文である。
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