研究課題/領域番号 |
21K03626
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
穂積 俊輔 滋賀大学, 教育学部, 教授 (90229203)
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研究分担者 |
岩澤 全規 松江工業高等専門学校, 情報工学科, 講師 (10650038)
似鳥 啓吾 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 技師 (80600824)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 恒星系力学 / 円盤銀河 / 銀河ウォープ構造 / N体計算 |
研究実績の概要 |
円盤銀河の外縁部の一端がその赤道面に垂直な方向の上向きにたわみ他端がその下向きにたわむウォープ構造の維持メカニズムをシミュレーションで調べるための数値計算コードを開発した。ウォープは円盤の外縁部の密度が低い領域で生じる構造であるため、大量の円盤粒子が必要となる。円盤を取り巻くダークマターハローは円盤の10倍程度の質量をもつので、ハロー粒子と円盤粒子の個々の質量を同一にしてハロー粒子が円盤通過時に及ぼすショットノイズを減らすためには、ハロー粒子数は質量比に応じて円盤粒子数の10倍程度にする必要がある。そこで、大量の粒子数を含むハローは、その密度とポテンシャルを正規直交基底関数系で展開してポアソン方程式を解くSCF法を適用した。通常の重力計算では各時間ステップあたりのその計算回数は粒子数の2乗に比例するが、SCF法では粒子数に比例するので、計算の高速化が可能となる。円盤はウォープのような構造を詳細に調べるためにツリーコードで重力を計算することとし、円盤粒子とハロー粒子間の相互作用はすべてSCF法を適用して計算の高速化を図った。このハイブリッドコードを並列化する際に、完全な並列性を備えているSCF法の並列化効率は100%となる。一方、ツリーコードにはFDPSという数値計算ライブラリによって並列化による効率を最大限に高めた。このようにして、円盤とハローからなる大量粒子の系を高速に計算できるコードを実現した。開発した数値計算コードとツリーコードのみで円盤とハローからなる系の長時間のテストシミュレーションを行い、その力学進化を比較して、結果の同等性を確認した。このことから、現状は計算コードのさらなる最適化の余地はあるが、大量粒子でウォープ構造の力学進化を調べられる計算コードを開発することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FORTRANで書かれた球状系のSCFコードを効率的にSIMD化するためのCコード移植は完了した。円盤のシミュレーションのためのツリーコードには、重力ソフトニングとしてソフトニングの長さの2倍以上の距離でニュートン重力を実現するスプラインソフトニングを組み込んだ。Cコード移植したSCFコードとFDPSライブラリを用いたツリーコードとの合体コードを作成した。その際、円盤粒子とハロー粒子間の重力計算はすべてSCF法で計算できるようにしてツリーコードで計算する部分を最小にすることで計算の高速化を行った。次に、合体コードの並列化によって高速化を図った。円盤とハローからなる同一の系を、開発した計算コードとツリーコードのみで長時間のテストシミュレーションを実行して結果の同等性を確認した。合体コードの最適化に関してはSIMD化を行った段階であり、まだ完全に最適化を実現していないが、研究実施計画に記載した内容のほとんどを実現できたために「おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
まず、昨年度に開発した数値計算コードに対して、さらに最適化を進める。円盤とハローからなる系に対して質量比を一定にしてそれぞれの粒子数を増大させたモデルと、円盤対ハローの質量比を変化させてそれに応じてそれぞれの粒子数を与えたモデルを作成し、開発したコードとツリーコードのみで計算した結果を比較して、開発したコードの性能評価を行う。それらの結果を論文にまとめて投稿する。次に、扁長ハローの赤道面に対して銀河円盤を傾けて配置し、励起されるウォープがどの程度の期間維持されるのかを調べる。その際、円盤モデルパラメータや扁長ハローのパラメータを変えたモデルを作成する。テストシミュレーションとして、円盤とハローの粒子はそれぞれ100万体と1000万体程度のモデルに対して、それぞれのパラメータをいくつか系統的に与えてシミュレーションを行い、その結果からそれらの典型的なパラメータを設定する。最終的に円盤粒子1億体、扁長ハロー粒子10億体で各パラメータに対応したモデルを作成し、どのようなハローと円盤モデルでウォープが維持されるのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、分担研究者と対面での研究打ち合わせをする旅費として配分していたが、コロナ感染症の状況が改善しないため、対面での研究打ち合わせを断念したことにより次年度使用額が生じた。この未使用額は次年度に旅費または消耗品の購入に当てる。
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