研究課題
本研究の目的は、宇宙最大級の巨大エネルギー放出を見せる活動銀河核の燃料貯蔵庫であるトーラスから降着物質が最終的にどのように中心のブラックホールに降着していくかという質量降着過程の解明を目指すことである。2021年度は当初の計画通り、(1)近傍活動銀河の核周領域 1パーセクスケールの分子ガスの撮像観測の実施、(2) 核周領域 100パーセクスケールの分子ガスの観測データの解析、を推進した。(1)の進捗状況としては、近傍活動銀河核 NGC1052 の分子ガストーラスの撮像観測を韓国ミリ波VLBI観測網 KVN で実施した。そして中心から2パーセクの半径地点において分子ガストーラスのスケールハイトが約 0.2 パーセクであると計測することができた。また、別の近傍活動銀河核 NGC4261 の分子ガストーラスの検出を目指し、東アジアVLBI観測網 EAVN を用いて1パーセクスケールのイメージング観測を実行した。この EAVN 観測についても、相関処理実施後の観測データを受け取り次第データ解析を開始する予定である。(2)の進捗状況については、フランスのミリ波干渉計 NOEMA による NGC4261 の観測データから HCN 分子と HCO+分子で構成された半径 100パーセクの回転円盤を検出することに成功した。これと同時に円盤内の中心質量および円盤の高密度ガス質量も導出した。今回得られた分子円盤の高密度ガス質量は、Izumi et al.(2016)で報告された、高密度ガス質量とブラックホール質量降着の相関関係を支持する結果となった。高密度ガス質量は星形成活動と密接な関係があることから、100パーセク分子円盤の星形成活動とブラックホールへの質量降着の関連が示唆された。これらの成果は既に査読論文出版の準備を進めており、まもなく投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
電波干渉計 NOEMA 観測のデータ解析が順調に進み、NGC4261 の中心部に回転分子円盤の撮像に成功した。この成果について現在論文執筆がほぼ終了し、まもなく学術誌へ投稿する段階に入っている。この天体の EAVN 観測も予定通り 2021 年度に実施され、現在相関処理が進められている。また NGC1052 においても KVN の観測が 2021 年度末に実施され、計画通りに観測データを取得できた。そのうち一部のデータで既に解析を進めている。以上、本課題の重要な観測データが順調に取得できており、計画が予定通り進展していると判断する。
2022年度は、これまでに取得できた観測データの分析に力を注ぐ。NGC4261 の NOEMA 観測により半径 100パーセクの回転円盤が確認できたが、もっと小さい1パーセクスケールのトーラス自体を分離撮像するまでには至らなかった。すなわちトーラスの存在を確認するためにさらに角分解能を上げた VLBI 観測の必要性が高まった。研究代表者による本天体の EAVN 観測が2021年12月に既に実施されており、今後データ解析を急ピッチで進める予定である。また、KVN による分子ガストーラスの撮像も同時に継続し、分子ガストーラスの構造や物理量の計測を推進する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 6件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
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