研究課題/領域番号 |
21K03628
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
澤田 聡子 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 客員研究員 (00452631)
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研究分担者 |
新沼 浩太郎 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30434260)
川勝 望 呉工業高等専門学校, 自然科学系分野, 教授 (30450183)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電波天文学 / 活動銀河核 / 電波銀河 / 分子ガストーラス / 質量降着過程 / 超巨大ブラックホール / 電波ジェット |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、宇宙最大級の巨大エネルギー放出を見せる活動銀河核の燃料貯蔵庫であるトーラスから降着物質が最終的にどのように中心の超巨大ブラックホールに 降着していくかという質量降着過程の解明を目指すことである。2022年度は、以下の2項目を主として推進した。 (1) 近傍電波銀河の核周領域100パーセクスケールの分子ガスの観測データ解析の完了およびそのまとめ。 (2) 近傍電波銀河の核周領域1パーセクスケールのガス分布の撮像観測の実施および観測データの解析。 (1)では、フランスのミリ波干渉計 NOEMA を用いて数天体の電波銀河の分子ガスサーベイを実施し、近傍銀河 NGC 4261 の中心100パーセク領域の HCN および HCO+ 分子輝線を初検出・初撮像に成功した。本観測から、これらの分子輝線は中心の超巨大ブラックホール周囲をとりまく回転円盤に付随することが示された。また、この円盤の質量および中心の超巨大ブラックホールの質量も導出できた。この成果は査読論文として出版した。 (2)では、東アジアVLBI観測網を用いて NGC 4261 の中心1パーセク領域を観測し、水メーザー放射のサブパーセクスケール初撮像に成功した。本観測からは、超巨大ブラックホール周囲1パーセク未満の領域では水分子ガスの運動はブラックホールの周囲を回転するのではなく、水分子ガスがむしろ中心の超巨大ブラックホールに向かって降着している様子を捉えた。この成果は既に査読論文としてまとめ、現在投稿・審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近傍電波銀河100パーセクスケールの構造を調査するための電波干渉計 NOEMA 観測のデータ解析は現在完了した。その成果は既に論文にまとめて出版済みである。現在は、近傍電波銀河1パーセクスケールの構造を調査する観測の実施および観測データ解析の段階に進んでいる。このうち、NGC4261 の観測データ解析が完了し、現在論文投稿中である。さらに別の近傍電波銀河の観測データ解析を開始しており、良好な観測データが取得できていることを既に確認済みである。以上、計画が予定通りに進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
近傍電波銀河 NGC 4261 の観測の成果をまとめることができたので、2023年度は対象天体を別の電波銀河に変え、NGC 4261 と同様の手法で観測を実施し、データ解析に力を注ぐ。当初予定していた観測天体に加え、新たに観測対象天体を数天体追加して観測することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者および研究分担者で対面による研究打合せを夏季休業期間に開催する予定でいたが、新型コロナウイルス感染拡大 (第7波)の時期とぶつかり、この時期の研究打合せを中止した。その後、感染拡大が少し落ち着いた秋に日数を縮小して対面研究打合せをおこなったため、当初の計画より旅費使用額が減り、結果として当該助成金が生じた。 翌年度は、感染状況を注視しながら当初の計画通り研究打合せを実施し、観測・データ解析・論文執筆など研究分担者との作業を効率的に進めていく予定である。
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