研究課題
本年度では主に、開発した位相遅延器と直交偏波分離器を用いて、円偏波分離器としての特性を評価した。円偏波を分離するために位相遅延器は直交偏波分離器に対して、45度傾いて設置されている。そのため、位相遅延器と直交偏波分離器の間には、低損失に偏波を合成可能な45度導波管変換が必要であった。45度導波管変換には、正方形-円形導波管変換2つと円形導波管1つを用いて設計した。製造した45度導波管変換を用いて、円偏波分離器の測定を進めた。円偏波分離器を精度よく測定するために、製造した2つの円偏波分離器を鏡面対称に接続し、円偏波分離器2つ分の反射損失、交差偏波分離度、挿入損失を測定した。測定結果より、反射損失と挿入損失では予想通りの結果が得られた。交差偏波分離度に関しては、一部問題があり、調査した結果、測定時に接続している直線の正方形導波管が交差偏波の劣化の原因であることがわかった。現在、正方形導波管の再製作および、正方形導波管無しでの測定が可能であるかを検討している。しかし、全体的に設計通りの結果が得られており、今後望遠鏡の搭載に向けて準備も進める。また、昨年度より進めていた測定時に使用している導波管変換の特性を除く測定も進めており、位相遅延器については取り除いた結果が設計結果をトレースしていることを確認できた。直交偏波分離器に関しては、今後取り除き、反射の劣化原因追求を進める。
1: 当初の計画以上に進展している
設計・開発を進めてきた210-365 GHzの円偏波分離器については、一部を除いて設計通りの測定結果が得られており、ミリ波サブミリ波帯における広帯域円偏波分離器が実現できつつある。今後、開発した円偏波分離器の望遠鏡への搭載準備を進めていく。一方で、本研究で開発した円偏波分離器を70-116 GHz帯の周波数で望遠鏡に搭載することが決まり、本研究内容が既に波及効果を生み出している。
交差偏波分離度の劣化の原因である正方形導波管のより詳細な調査のために、正方形導波管の3次元測定を検討している。これにより、片方の円偏波にのみ影響がある原因を理解し、再製作にフィードバックさせる。加えて、望遠鏡への搭載に向けて、クライオスタットを用いた冷却試験が可能かどうかの検討を進めている。また、より高性能な特性を持った円偏波分離器の開発も進めており、反射損失24dB、位相遅延量90±4度の位相遅延器の設計が得られている。この設計の試作として、70-116 GHz帯での製造を考えており、210-365 GHzに比べて切削精度が高い条件下で回路を製造可能である。そのため、高性能な設計を再現する測定結果が得られると期待できる。上記の低周波での開発を元にして、210-365 GHz帯の設計へのフィードバックを検討する。
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Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: - ページ: -
10.1093/pasj/psad015
IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology
巻: 12 ページ: 527~534
10.1109/TTHZ.2022.3191851