本年度では昨年度に引き続き、円偏波分離器としての特性評価を進めた。円偏波分離器を構成する位相遅延器および直交偏波分離器を単体で測定する際に、測定用の導波管変換を使用しており、導波管変換の反射の影響で回路単体の反射特性を測定することがこれまで難しかった。導波管変換の影響をなくすために、変換のみの散乱行列の抽出を行い、回路単体の特性を得ることに成功した。位相遅延器はほとんど設計をトレースする結果が得られている。直交偏波分離器では、一部設計よりも反射損失が劣化しているが、大部分で設計をトレースしており、設計に近い回路が製造されていることを確認できた。 昨年度の測定の不確かさの原因であった正方形導波管を省いて円偏波分離器の測定を進めたが、接続に難しさがあり正確な測定が不可であった。正方形導波管の特性改善を目指して、正方形導波管の再製作を進めたが、本年度内での測定が実施できず、来年度に測定を進める予定である。 また、本円偏波分離器を用いて、受信機として評価するための準備を進めた。具体的には210-375 GHz帯の超伝導ミキサを測定する系の構築を進めており、測定系の構築が完了後に円偏波分離器を組み合わせた雑音評価を進める予定である。 加えて、本研究課題で達成した広帯域円偏波分離器の技術を他の周波数帯へ応用し始めている。特に、70-116 GHz帯に焦点を当て、回路の設計・改良・測定を進めている。並行して、広帯域円偏波分離器の原理確認用に製造した試作器の70-116GHz帯円偏波分離器の望遠鏡搭載を進めており、すでに天体観測を開始している。
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