【最終年度】 ①2023年度は5月に2週間の飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡共同利用観測期間の割り当てを受けて高速2次元分光観測を行った.太陽活動が活発化していることを踏まえ,フレアのような増光現象を主要ターゲットとした.観測波長は2022年度と同じく水素Hα線(太陽彩層上部で形成)とナトリウムD1線(彩層下部で形成)とした.②その結果,GOES衛星が観測したX線ピークと同時間帯に発生したHα線増光現象を時間分解能1.3秒~1.9秒で約20分間連続観測することに複数回成功した.③特に5月9日の世界時01:34から01:56にかけては,Hα線・D1線両方の増光が観測され,太陽プラズマの変動が彩層の高さ方向に伝搬する様子を時間分解能2.6秒で追跡することに成功した.この成果は2024年2月の飛騨天文台ユーザーズミーティングおよび2024年3月の日本天文学会春季年会において発表した. 【研究期間全体】 ①高速2次元分光観測の要となるイメージシフターについて,研究開始年度にその最適な動作条件を決定することができた.②Hα線とマグネシウム 457.1 nm線またはD1線における2波長同時分光観測を行い,フレアやエラーマンボムを含む増光現象やプラズマ噴出現象,黒点振動,フィラメント構造などの時間・空間変動について貴重なデータが得られた.また,457.1 nm線よりもD1線のほうがHα線の変動との関連が見られやすいことを確認した.③2次元分光の時間・空間領域について,先行研究においては60秒角四方の視野で時間分解能10秒程度であったが,本研究課題では100秒角四方,時間分解能2秒以下を達成し,かつ2波長同時観測により太陽大気の高さ方向についての情報を得ることにも成功した.本研究課題の目標である「彩層活動現象のダイナミクス解明の空間・時間領域を拡大する」ことができたと考えている.
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