研究課題/領域番号 |
21K03634
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
原田 ななせ 国立天文台, 科学研究部, 助教 (10785421)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スターバースト銀河 / 電波天文学 / ALMA / 星間化学 / 近傍銀河 / 星形成 |
研究実績の概要 |
本研究は近傍の星形成が活発な銀河の分子組成を調べ、そこから星の材料である分子ガスの物理条件を明らかにすることを目的としている。その初年度の令和3年度はその第一段階として、アルマ大型プログラムのALCHEMIのデータを用いて、統計的な解析を行うことを当初の目的とした。令和3年度では、統計的な解析を行う前段階として得られた画像の中でも注目すべき分子に関して解析を行い、一本の主著論文を出版した。この論文ではターゲット銀河であるNGC253において既にできた星から放出される宇宙線や紫外線がどの程度分子ガスの物理条件に影響を与えているかを調べることができた。こうした加熱やイオン化などのエネルギーで銀河内の圧力を増すことにより、将来の星形成を抑制する可能性が考えられるため、その影響を調べることは重要である。今回はこれらを調べるためにHOC+というラジカルの分子を用いた。
また、他にもALCHEMIのデータから、衝撃波の影響から特徴的な分布を表す分子を発見することができた。この主著論文の解析もほぼ終わり、論文を近々投稿予定である。一方で当初の目的である統計的な解析も進めており、解析に使われる画像データの作成は終了した。また、このアルマ大型プログラムALCHEMIに関して、サーベイの概要と全体的な化学組成の結果を示した論文や、系外銀河におけるリンを含む分子の初検出を報告した論文など複数の共著論文が出ている。このサーベイ以外にも、他の銀河で得られた分子組成を解析した論文が出版されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の初年度の目的であった統計的な解析に向けてデータの解析を進め、大量のデータの概要を掴むことができた。また、この中で特徴的な振る舞いをする分子を発見したため、その結果に関して解析をし、論文化を進めることができた。そのため統計的解析においては当初の予定より遅れをとっているが、研究全体としては着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は当初の予定であった統計的解析を引き続き行い、論文化を進める予定である。この論文にはALCHEMIサーベイ全体のまとめとなる内容を含む予定である。また、この統計的な結果を解釈するための化学モデルの構築も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は新型コロナウイルスの影響で計画されていた国際研究会が全て延期になり、使用を延期する必要が出てきた。令和4年度には海外渡航も以前よりは容易になり、研究会も予定されているので、ここ数年失われていた対面での国際共同研究者との議論の機会を持ち、研究を促進したい。また、大量のデータ解析が可能なワークステーションを購入して現在来続けている観測データの解析に役立てる。
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