研究課題/領域番号 |
21K03636
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
松本 敏雄 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 名誉教授 (60022696)
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研究分担者 |
佐野 圭 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (70802908)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 観測的宇宙論 / 可視・近赤外背景放射 / ブラックホール / 初代星 |
研究実績の概要 |
可視・近赤外領域では既知の天体では説明できない背景放射の明るさ、および揺らぎが観測されている。その起源として松本と津村(2019)は暗いが非常に数の多い点状の天体 Faint compact object (FCO)を見出した。FCOはわれわれの近傍(z<0.1)に存在し、その質量光度比からブラックホール天体、ミニクエーサーと提案されている。また、TeV-ガンマ線の観測から、ごく近傍の天体と考えられている。本研究ではFCOの放射機構および起源について調べ、以下の知見を得た。 1. FCOの Spectral Energy Distribution (SED) は可視のパワーロー、赤外超過が特徴的である。前者はブラックホール周辺の降着円盤によるものと考えられてきたが、赤外超過の発光機構は不明であった。今回我々は多くのFCOが波長1.4μmに吸収をを示すことに注目し、ブラックホールの伴星として赤色巨星・超巨星を想定し、大気モデルがSEDをうまく説明できることを示した。伴星の質量はM型星がほとんどであることから1太陽質量以下と推定された。 2. 大質量星よりなる宇宙第一世代の星の名残であるブラックホールが小質量星よりなる第二世代の星をトラップしたものがFCOとするシナリオを提案した。これによると現在光っているFCOの伴星の質量は0.8太陽質量と推定される。また、ブラックホールが未知の物質(missing baryon)よりなるとすると、その質量が 10~1000太陽質量、いわゆる Intermediate Mass Blackhole (IMBH)であることを示した。IMBHは宇宙に普遍的に存在し、重力波天体の起源と考えられる。また、宇宙の質量分布やX線天文学へ今後大きな影響を及ぼすものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・コロナ禍のため対面での議論はできなかったが、TV会議が順調に機能して研究が着実に進んだ。 ・晩期型星の権威である山村准教授(ISAS/JAXA)との共同研究が始まり、伴星のSEDの解釈が飛躍的に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
1. FCOの発光機構および進化についての論文を早急に取りまとめ、投稿する予定である。 2. AGN等の他のブラックホール天体では激しいカオチックな時間変動が観測されている。FCOが同様な時間変動を示すかどうかは降着円盤の構造に関連し興味深い。公開されている短時間の露出画像を用い、可視・赤外両者での時間変動を調べ、これにより放射機構についての情報を得ることを目指す。 3. 赤外域での深宇宙サーベイはJWSTの主要課題の一つであり、今年度内には最初の成果が公開されると思われる。最新のデータをなるべく早く入手し、我々の結果を確認したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は本研究の2年度にあたり、110万円が配分される予定である。これを松本、佐野がそれぞれ90万円、20万円分担する。 主たる経費としては論文の英文校正経費・投稿料および学生への謝金である。また、旅費として海外へ一度、国内でのチーム打合せを2回ほど予定している。
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