研究課題
宇宙背景放射は銀河系外から飛来する放射の積算であり、宇宙初期から現在までの天体形成史を解明するために重要な観測量である。これまでの観測によって、可視光および近赤外線の波長域における宇宙背景放射の輝度およびゆらぎは既知の天体だけでは説明できないことが分かってきた。その起源として、本研究代表者である松本らによって暗くコンパクトな天体Faint Compact Object(FCO)が提案された。FCOは近傍の宇宙に存在し、その質量光度比からブラックホール天体またはミニクェーサーであることが示唆される。本研究では、FCOの放射機構および起源についてさらに詳細な研究を実施した。FCOのSpectral Energy Distribution(SED)は、可視光ではパワーロー、近赤外線では超過を示す特徴がある。前者はブラックホール周辺の降着円盤によるものと考えられるが、後者の発生機構は不明であった。そこで我々は、多くのFCOが波長1.4μmで吸収を示すことに注目し、ブラックホールの伴星として赤色巨星、超巨星を想定し、その大気モデルによってSEDを説明可能であることを示した。伴星の大部分はM型星であることから、その質量は1太陽質量以下と推定された。本研究成果について論文を執筆中である。FCOの起源について、宇宙の最初期に形成されたブラックホールが、その後に形成された星々を重力的に束縛したものがFCOであるという説を提案した。この仮説によると、FCOの伴星の質量は0.8太陽質量程度と推定される。また、ブラックホールが未知の物質であるミッシングバリオンから成ると仮定するとその質量は10-1000太陽質量になることを示した。活動銀河核等の他のブラックホール天体では、フラックスの不規則な時間変動が観測されているため、FCOが同様の時間変動を示すかどうかはその降着円盤の構造を明らかにするために重要である。そこで、我々はハッブル宇宙望遠鏡の既存の観測画像を用いてFCO候補天体のフラックスの時間変動を調査した。その結果、複数のFCO候補天体で時間変動が示唆されるが、それを系統的に解釈するために、天体測光における不定性の評価を行っている。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Astrophysical J.
巻: 926 ページ: 6-22
10.3847/1538-4357/ac416f
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