研究課題/領域番号 |
21K03638
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
倉本 圭 北海道大学, 理学研究院, 教授 (50311519)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 初期地球 / 還元型原始大気 / 大気散逸 / 光化学 / 進化 / 酸化 / 炭化水素 / 重合 |
研究実績の概要 |
水素とメタンを主成分とする還元型初期地球原始大気の進化モデルの構築を進めた。還元型原始大気の組成進化は、水素分子など軽分子の宇宙空間への散逸と、光化学反応によって駆動される。メタンを出発物質とする炭化水素の重合化と水酸基ラジカルとの反応による酸化の分岐比を正しくモデル化するため、光化学過程を駆動する紫外光の放射伝達モデルを、既存研究では無視されていたC2化合物を含む多分子種による吸収を忠実に取り込み改良した。その結果、エタンやアセチレンなどC2化合物が、水蒸気の光分解を引き起こす波長帯の紫外光を効率的に吸収し、水酸基ラジカルの生成とこれに続く炭化水素の酸化を阻害することが明らかになった。これによって、炭化水素の重合化が卓越するようになる。さらに、還元的な化学組成の原始大気の寿命を従来の推定よりも大幅に延ばし、シアン化水素やホルムアルデヒドなど、生命の材料となる有機分子の原料化合物の生成を促進する効果があることが分かった。
大気散逸モデルについては、放射活性分子種を含む原始大気の放射冷却効果によって、水素散逸が著しく抑制されることをこれまでに明らかにしたが、炭素化合物の散逸が完全に停止する条件で、数値解が安定的に得られない問題が残っていた。この原因について解析を進め、初期条件や境界条件の置き方、定常解に到達するまでの計算ステップなどを全面的に見直し、数値計算を安定して行うための指針を整理し、試行計算に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光化学モデルの構築が着実に進展し、従来見逃されていた有機分子による紫外線遮蔽を考慮することで、還元的原始大気において有機分子が効率的に生成される新たな仕組みを見出しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
・炭素化合物の散逸が停止した条件での水素散逸の数値モデリングを進める。この条件下では数値計算の不安定化が問題となっていたが、新たな緩和法の導入で解決のめどが立ちつつある ・光化学進化モデルをさらに改良する。具体的には、高分子量成分や有機物ヘイズの反応群および放射過程への導入、水溶性化合物の堆積率の表現の改良を行う。 ・最新の大気散逸モデルと光化学モデルを結合し、還元型原始大気の長期組成進化モデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は配算額の約95%を使用した。若干の残額は2023年度の支出計画に組み入れる方が妥当と判断した。具体的には、2023年度に必要となる人件費に充当する。
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