研究課題/領域番号 |
21K03641
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
橋口 未奈子 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (80770627)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 始原的隕石 / 金属を含む有機化合物 (MOC) / 不溶性有機物 (IOM) / 水質変質度とMOC存在量の関係 |
研究実績の概要 |
水質変質度,熱変成度の異なる4種の始原的隕石について,粉末化後,ヘキサン,ジクロロメタン,メタノール,水を用いたMOCの化学溶媒抽出を行った。その後,塩酸-フッ化水素を用いて, IOMを抽出した。 MOCとIOMの存在量はどちらも,水質変質の度合いが高い隕石ほど大きい傾向が見られ,先行研究と矛盾しない結果が得られた。また,DESI-HRMSイメージングにより,含水鉱物を豊富に含むマトリックス領域にMOCが濃集している傾向が確認された (ただし,水質変質度の最も低い隕石についてはDESI-HRMSイメージング分析は未実施)。MOCおよびIOMの詳細な化学組成,および周囲の鉱物との相関については,データ解析を進めている。 さらに,抽出したIOM試料について,金属元素量を求めるためのLA-ICP-MS分析に向け,ケロジェン試料を用いて試料前処理手順の検討およびリハーサル分析を行った。粉末状の試料の固定,分析は試料のロスが多くなってしまうため,LA-ICP-MS以外の分析装置の使用も視野に前処理手順・最適分析条件を再検討している。また, 赤外分光法を用いて標準試料との比較によりMOCの化学構造の調査を実施した。標準試料との比較による化学結合種の同定には至っておらず,化学構造の同定を目指し,現在,液体クロマトグラフィーを利用した分析法も検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金属-Cの化学結合種の検出,定性分析が予想よりも困難を極め,明確なデータの取得に至っていない。金属元素量の定量・定性分析に利用予定であったLA-ICP-MSの分析手順構築にやや時間を要している。また,装置および実験室の大幅メンテナンスにより,使用可能な時期に制限が生じたことも理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
金属-Cの化学結合種の検出,定性分析および金属元素量の定性・定量分析には,申請書に記載している分光分析,ICP-MS分析以外の手法を利用することを視野に,申請書内容の目的に向けて進めていく予定である (液体クロマトグラフィー (+質量分析装置を検討中)。研究目的および各分析目的に向け,その他は主に申請書内容通りに進める。上記のようにやや遅れていることを踏まえ,確実に取得可能なMOCの化学組成同定・定性分析,IOMの化学組成分析について,他の隕石種についても実施し,まずは1. 始原的隕石中のMOCの存在度, 化学組成,2. 始原的隕石中のMOCと鉱物との関係,3. MOC,IOMの存在度の相関の有無について,隕石の変質度を踏まえて議論できるデータを確実に取得する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の物品購入の際,残額と執行済み予算額を勘違いしてしまい,1,164円の残高が発生してしまった。R3年度に購入予定であった1,164円の物品 (実験に使用するガラス器具)は未購入のため,R4年度に予算執行させて頂く予定である。
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