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2023 年度 実施状況報告書

衝突破壊を考慮した包括的な地球型惑星形成の理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K03642
研究機関名古屋大学

研究代表者

小林 浩  名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (40422761)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード惑星形成 / 天体衝突 / デブリ円盤
研究実績の概要

本研究では、巨大衝突ステージの惑星形成を破壊を考慮して以下の手順 (i)と手順(ii) で調べている。
手順(i) 巨大衝突を模擬したSPH 法を用いた衝突シミュレーションを様々なパラメータで行い衝突モデルを構築する。衝突破片の進化を考える上 で重要なのは破片の総質量と破片の最大サイズで ある。国立天文台のスーパーコンピュータXC50を利用して衝突角度、衝突体の質量比、衝突速度をパラメータとして、多くのシミュレーションを行った。原始惑星衝突の結果、合体して多くの質量が一つの天体に集合する「合体衝突」、合体せずに2体の天体がほとんどの質量を保持する「すれちがい衝突」、破壊が起きて数多くの小さな天体ができる「破壊的衝突」の3種類の結果が得られることがわかった。また、衝突における衝撃波エネルギーの大きさを評価することで、これらの3種の結果を包括的に表現する解析的な表現が可能であることも示した。
手順(ii)原始惑星が放出した粒子を粒子間の評価しながら、軌道・衝突進化を同時に計算するN体計算を行う。(i)のシミュレーションにより巨大衝突時は蒸発が起きることが示された。この蒸気は衝突後の膨張に伴い再凝縮し、1cmサイズ程度の粒子を大量に放出する。この粒子の衝突・軌道シミュレーションにより、この粒子は年単位で明るさや形状が進化するデブリ円盤を形成することがわかった。短時間で明るさが変化するデブリ円盤は、天文観測でも発見されており、説明できる可能性がある。また、長周期の軌道進化は惑星の質量や軌道にも影響を及ぼす可能性が高い。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題の手順(i)と(ii)を並行して実施してきた。しかし、最終的な手順(ii)の実施には、手順(i)の結果を使用する。手順(i)の結果の導出に時間がかかったために、手順(i)の結果を使用する手順(ii)の研究の実施が遅れている。
手順(i)では、巨大衝突を模擬したシミュレーションの結果を理解するために、衝突に関するパラメータ空間を増やし徹底的にシミュレーションをおこなってきた。その結果、全てのパラメータの依存性を理解できる解析的な式を導出できた。この解析式は素晴らしく、手順(ii)のN体シミュレーションに使用できるだけでなく、惑星系におけるさまざまなスケールでの衝突結果を包括的に理解する解析的なスキームにつながる発展性のある結果である。この結果を導出するために、時間がかかり過ぎてしまった。
一方、手順(ii)では、その後の破壊を考慮したN体シミュレーションを行うが、手順(i)の結果を使用したシミュレーションコードの開発が改良が遅れている。これまでも手順(ii)では手順(i)の結果によらない部分の改良は進めてきた。例えば、破壊を考慮したN体シミュレーションには短い時間の進化には3次元的な効果が重要になることを突き止め、その対処の改良は終わっている。しかし、手順(i)の結果を使用した衝突シミュレーションの結果を実装したN体シミュレーションについては、手順(i)の結果が得られていなかったため取り掛かれていなかった。

今後の研究の推進方策

本研究で行ってきた手順(i)と(ii)を以下のように、進めていく。手順(i)では、これまでに得られた巨大衝突を模擬したシミュレーションの結果と解析式を論文としてまとめ投稿する。一方、手順(ii)では、手順(i)で得られた解析式を用いて、破壊を考慮したN体シミュレーションを行えるようにコードの改良を行う。このコードの改良ができなかったため今年度は購入を見合わせた高精度計算機を購入する。そして、この計算機を用いて手順(ii)のシミュレーションをさまざまなパラメータについて徹底的に調べる。破片の振る舞いは、短期的には破片の作る円盤の明るさや形状を変化させるため、観測により検証可能な天文学的に重要な課題である。一方、長周期の進化は巨大衝突を起こした地球型惑星がどのような軌道に落ち着くかに関係する惑星形成論的に重要な問題である。そこで、まずは詳細な空間解像度が必要だが長い時間積分が必要でない短期のシミュレーションを行う。手順(i)で導出したモデルが手順(ii)のシミュレーションで問題を起こさないかチェックするとともに、巨大衝突によって作られる破片の円盤の明るさの進化などを調べる。短周期シミュレーションにより十分にシミュレーションに信用性ができたら、長周期のシミュレーションを実施する。 長周期のシミュレーションにより、巨大衝突の衝突破片が惑星にどのような影響を及ぼすかについて調べる。その結果、巨大衝突ステージの結果、どのような質量や軌道の地球型惑星が形成されるか解明する。

次年度使用額が生じた理由

前年度に手順(ii)のシミュレーション用のコードを確定させ、N体シミュレーション用の計算用のコンピュータの購入を予定していた。しかし,手順(i)の衝突シミュレーションの結果をまとめることを優先したため、手順(ii)のN体シミュレーションに衝突シミュレーションの結果を実装できなかった。そのため、N体シミュレーション計算用のコンピュータの購入を見合わせた。そのために次年度使用額が生じた。今年度に手順(i)の衝突シミュレーションに基づく衝突モデルが完成したため、この結果を手順(ii)のN体シミュレーションコードに実装できる。この手順(ii)のN体シミュレーションの実施ために、次年度にコンピュータを購入する予定である.

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] JPL/NASA(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      JPL/NASA
  • [国際共同研究] University of Exeter(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Exeter
  • [雑誌論文] Sticking of Fine Particles in High-velocity Impact: Application to Size Distribution of Dust Grains in a Debris Disk2024

    • 著者名/発表者名
      Toshihiko Kadono, Hiroshi Kobayashi, and Mitsuru Yokoyama
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 960 ページ: 38

    • DOI

      10.3847/1538-4357/acfee6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A Primordial Origin for the Gas-rich Debris Disks around Intermediate-mass Stars2023

    • 著者名/発表者名
      Riouhei Nakatani, Neal J. Turner, Yasuhiro Hasegawa, Gianni Cataldi, Yuri Aikawa, Sebastian Marino, and Hiroshi Kobayashi
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 959 ページ: L28

    • DOI

      10.3847/2041-8213/ad0ed8

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Dust Enrichment and Grain Growth in a Smooth Disk around the DG Tau Protostar Revealed by ALMA Triple Bands Frequency Observations2023

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Ohashi, Munetake Momose, Akimasa Kataoka, Aya E. Higuchi, Takashi Tsukagoshi, Takahiro Ueda, Claudio Codella, Linda Podio, Tomoyuki Hanawa, Nami Sakai, Hiroshi Kobayashi, Satoshi Okuzumi, and Hidekazu Tanaka
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 954 ページ: 110

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ace9b9

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] A Constraint on the Amount of Hydrogen from the CO Chemistry in Debris Disks2023

    • 著者名/発表者名
      Kazunari Iwasaki, Hiroshi Kobayashi, Aya E. Higuchi, and Yuri Aikawa
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 950 ページ: 36

    • DOI

      10.3847/1538-4357/acc524

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Rapid Formation of Gas-giant Planets via Collisional Coagulation from Dust Grains to Planetary Cores. II. Dependence on Pebble Bulk Density and Disk Temperature2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Kobayashi and Hidekazu Tanaka
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 954 ページ: 158

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ace96b

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Insignificance of Collisional Damping in Debris Disks2024

    • 著者名/発表者名
      小林浩
    • 学会等名
      DUST DEVILS WORKSHOP DEBRIS DISKS IN THE SONRAN DESERT
    • 国際学会
  • [学会発表] ダストから惑星への統一シミュレーションと衝突モデル構築2023

    • 著者名/発表者名
      小林浩
    • 学会等名
      新学術領域「星・惑星形成」2023年度大研究会
  • [学会発表] ダストから惑星までの統一シミュレーションと衝突モデルの再構築2023

    • 著者名/発表者名
      小林浩
    • 学会等名
      研究会「星・惑星形成:これまでの20年間とこれから」
  • [学会発表] 熱対流を取り扱うためのラグランジュ的流体シミュレーションSPH法コードの開発2023

    • 著者名/発表者名
      高橋航, 小林浩, 瀬野泉美, 犬塚修一郎
    • 学会等名
      日本惑星科学会2023年秋季講演会
  • [学会発表] Shock Pressure Distribution Due to a Planetary Impact2023

    • 著者名/発表者名
      宮山隆志, 小林浩
    • 学会等名
      55TH DPS MEETING JOINT WITH EPSC
    • 国際学会
  • [学会発表] Revealing Habitable Planet Formation via High-Resolution Infrared Observation2023

    • 著者名/発表者名
      小林浩
    • 学会等名
      日本天文学会2023年秋季年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 小天体衝突が形成する衝撃波圧力分布とその解析的取り扱い2023

    • 著者名/発表者名
      宮山隆志, 小林浩
    • 学会等名
      日本天文学会2023年秋季年会
  • [学会発表] Importance of collisional sticking of fine particles in debris disks2023

    • 著者名/発表者名
      小林浩
    • 学会等名
      Cosmic Dust
    • 国際学会
  • [備考] 小林浩の研究紹介

    • URL

      https://www.astro-th.phys.nagoya-u.ac.jp/~hkobayas/hp_main/research_j.html

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公開日: 2024-12-25  

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