研究課題/領域番号 |
21K03645
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
近藤 光志 愛媛大学, 宇宙進化研究センター, 助教 (30304653)
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研究分担者 |
新田 伸也 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 准教授 (30377121)
清水 徹 愛媛大学, 宇宙進化研究センター, 准教授 (60196524)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非対称磁気リコネクション / 磁気流体計算 / 実衛星観測 / 磁気シア / 磁気圏境界 |
研究実績の概要 |
本研究では、シミュレーション空間に配置した仮想衛星による磁気圏境界通過時の観測結果を実衛星による観測データと比較することで、実衛星の通過領域を判別し我々のモデルを検証することを目的としている。その前段階として、二次元磁気流体シミュレーションを用いて地球昼側磁気圏境界を想定した非対称磁気リコネクションのシア磁場効果を調査した。その結果、シア磁場なし非対称磁気リコネクションと同様にプラズモイド前面に長いファストモード衝撃波が形成されるが、シア磁場成分が衝撃波を弱める。プラズマβ値のより低い側のプラズマが電流層を横切り、より高い側に入り込み、電流層両側のプラズマがプラズモイド中で同一磁力線上に共存する。非対称と磁気シアは共に桁のオーダーでリコネクションレイトを劇的に減少させる。ことが示された。次に、以上のシア磁場を考慮した場合を含め、実際の現象は三次元的であり、より現実的な環境で三次元計算を行い非対称磁気リコネクションの三次元構造を調べるため、まずはシア磁場を考慮せず、電流層両側の磁場強度比を固定した三次元磁気流体シミュレーションを用いて、二次元計算の結果を検証した。三次元計算においてもプラズモイド前面のファストモード衝撃波が形成されることが確認できた。しかしながら、二次元の場合より磁気リコネクションの発達がゆるやかであり、衝撃波の形成が遅くなることが確認された。これは、磁気リコネクション領域への非磁化プラズマの流入によるリコネクションレイトの発達の遅延であることが示された。一方で、より現実的な数値計算を行うため、地球磁気圏観測衛星GEOTAILによる長年にわたる観測データを用いた昼側磁気圏境界付近のプラズマ環境の変動について調査した。境界を挟んだ磁気圏側とシース側の磁場強度比やプラズマ密度比にはわずかな東西方向依存が見られ、また、それらの時間変化も示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)これまで行ってきた二次元数値計算において、非対称と磁気シアの効果についての総括が完了したこと。 2)三次元計算の目途が立ち、実際に二次元計算と同様の結果が得られたこと。 3)実衛星観測データを用いた昼側磁気圏境界環境の把握が行えたこと。実際、観測データで得られた磁場強度比変動の変動幅は、これまでの数値計算で行ってきた磁場強度比の範囲内であり、数値計算で得られた知見が応用できる。 以上の点から、おおむね順調に進展している。 一方で、これまでの数値計算はほとんど温度一定条件の下で行ってきたが、実衛星観測データでは、境界両側の温度は一定ではなく、温度比が一定であることが示されている。次年度以降、温度比一定の条件下での計算を行い確認する必要がある。また、これまでの数値計算は、磁気リコネクションの発達が相似状態になった時点での評価であったが、主に赤道面付近で観測されている実衛星観測と比較するためには、発展途上の評価をする必要がある。発展途上における状態と相似状態の違いについても調べる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1)二次元計算と実衛星観測との比較 進捗状況でも述べたように、GEOTAIL衛星データから得られた、より現実的な温度比一定の条件下および相似状態までの二次元数値計算の解析を実施したのち、実衛星観測データとの比較を行う。 2)三次元計算の推進 二次元計算と並行して三次元計算を行い、より現実的な条件、特に非対称かつ磁気シアがある環境での三次元的な磁気リコネクション発展を調べ、実衛星観測と比較する。 3)衛星観測データ統計量の増進 すでにGEOTAIL衛星による観測データを用いた磁気圏境界付近の磁気圏とシース領域の調査を行ったが、今後は、より高時間分解能データを用いて磁気圏境界層内の解析を進めるため、THEMIS、MMS衛星群のデータ解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響で使用予定の旅費が翌年度に持ち越されたため当該助成金が生じた。次年度に研究成果を公表するために使用する予定である。
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