研究課題/領域番号 |
21K03654
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
田中 雅彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, 主幹エンジニア (60249901)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | はやぶさII / リュウグウ / 始原的太陽系物質 / X線回折 |
研究実績の概要 |
小惑星探査機「はやぶさII」は炭素に富んだC型小惑星「リュウグウ」に到達し、その表面の試料を収集し地球にもたらすことに成功した。小惑星リュウグウの物質は、熱変成の程度が低く太陽系生成初期の物質を保存している可能性が高い。このような始原的小惑星を探査することは惑星形成の初期過程を解明するための情報を得ること、さらにその構成物質を解析することで始原的惑星からの物質分化過程や分化した惑星に存在する岩石・鉱物・水のみならず、生命に必要不可欠な炭素及びその高分子化合物の起源を解明できる可能性がある。 はやぶさII探査機により回収された小惑星リュウグウの試料を用いて得られた粉末X線回折データを解析し鉱物相を同定した。シンクロトロン放射光X線を用いたガンドルフィカメラ法にて疑似粉末X線回折データを収集した。ガンドルフィカメラ法は高ギア比で組み合わされた回転軸により試料を疑似的に三次元的に全方位に向くように回転することができ、微結晶の集合体から疑似的な粉末回折図形を得ることが可能である。 シンクロトロン放射光を波長2.1612(Å)のX線に単色化しそれを用いて粉末回折データを収集した。得られた粉末回折図形から回折ピークの2θ値を求め、その結晶面間隔の値を決定した。Si標準粉末結晶の回折ピークの2θ値を用いて試料の2θ値は補正している。結晶面間隔の値および粉末回折パターンより試料に含まれる鉱物相の同定を行った。前もって収集してあった、各種の始原的隕石の粉末回折パターンと比較することで、鉱物相の存在様態、組み合わせ等から小惑星リュウグウからの回収試料がどれくらい分化した隕石試料と類似しているか比較検討をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シンクロトロン放射光X線を用いたガンドルフィカメラ法にて得られた疑似粉末X線回折データの解析により、試料にどのような鉱物相が含まれるか同定ができ、鉱物相の組み合わせの知見が得られてきている。これらの情報と、前もって収集してあった各種の始原的隕石の粉末回折パターンと比較することで、小惑星リュウグウからの回収試料がどれくらい分化した隕石試料と類似しているかの知見も蓄積されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
X線回折データの解析をすすめ、より詳細な試料を構成する鉱物相の結晶学的データを求める予定である。結晶学的データは既知の鉱物のデータを参照することで、始原的惑星物質と差異があるかどうかを比較・検討する。さらにリュウグウ試料に含まれる鉱物で適切なものを選択し、化学組成や結晶学的情報を取得することで試料の経てきた履歴(温度、圧力等の情報)の解析を試みる(鉱物学的温度圧力計の利用)。これにより始原的小惑星物質の分化過程の情報を得るとともに小惑星リュウグウの履歴に関する情報を得ることを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により、成果発表を予定していた学会・シンポジウム等が開催中止、延期やオンライン開催となったため、成果発表のための費用が執行不要あるいは予定額より大幅に削減されたため。成果発表を当初計画に近づけるように努力するとともに、これからの解析を高効率に行うために機材やソフトウエアの充実・高度化を行う。
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