研究課題/領域番号 |
21K03658
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
筆保 弘徳 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (00435843)
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研究分担者 |
松岡 大祐 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(情報エンジニアリングプログラム), グループリーダー (80543230)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 台風 / 室内実験 / 多角形壁雲ライフサイクル / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究は段階的に研究計画を設定しているが、初年度は、予定通り課題1に取り組んだ。研究計画課題1とした台風条件下での回転水槽実験の実施として、台風条件に合わせた回転水槽実験を行った。台風構造を模擬するために、通常の実験とは異なり中央水槽が高温域、外側水槽が低温域になる実験設定に拡張した。台風は渦度のピークが中心ではなく壁雲付近に存在するため、壁雲の内側と外側で渦度偏差勾配が異なる。その効果を模擬するため、実験槽底面に高低差をつけた壁雲あり実験(さらに壁雲内側実験,壁雲外側に分類)、壁雲なし実験の3種類の実験設定に拡張した。条件①温度差20 ℃、条件②温度差なしで水深4cmまたは6 cm、回転速度1~12 rpm(1rpm間隔)の約140回以上の実験を行った。解析は回転開始から5~20分の5分間を切り出した結果を解析した。 実験設定によって規則的な波動の有無があったが、波動伝播が顕著な結果については詳しく解析を行った。温度差あり実験の背景の流れ(背景流)は時計回りであった。温度差あり壁雲なし実験から、発生した波動が時計回りに伝播したことがわかった。壁雲内側実験(外側実験)では波動が時計回りに伝播したが、その伝播速度は壁雲なし実験よりも遅かった。一方、温度差なし壁雲なし実験では不規則な波動が発生していた。温度差なし壁雲内側実験では比較的規則的な波動が発生していて、壁雲なし実験よりも速く反時計回りをしていた。 壁雲外側実験では規則的な波動が発生していたが、発生した波動はどちらの方向にも伝播していなかった。 これらの台風条件での回転水槽実験の結果は、従来のシミュレーション研究とともに台風内部コアの理解に活かすことができることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題1の実験装置にやや変更があり、その装置の調整に時間がかかった。なんとか100回を超えた実験を行ったが、予定していた回数の実験まで到達していない。研究達成度は遅れていると考えられる。今後は課題1の実験を繰り返し増やしながら、課題2にできるだけ早めに着手する。
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今後の研究の推進方策 |
実験装置が整備されたので、2年目も課題1を引き続き行う。つまり、研究代表者が担当して、台風条件下での回転水槽実験の実施とその実験結果の定量化を行う。特に初年度ではできなかった回転水槽実験の結果をParticle Image Velocimetry (PIV)解析法により定量化をする。さらに、その定量化された運動から波数別渦運動エネルギー存在率として運動パターンを定量的に区分し、その時間変化や空間分布などを調べる。 その結果が十分にでたところで、第2段階として、研究代表者と分担者により深層学習を用いた「流体予測モデル」の開発を行う。回転水槽実験の解析結果に対して、画像と定量化した運動パターンを紐づけした深層学習を行う。この時、画像と運動パターンは時間をずらすことで、未来の運動パターンを予測するモデルが構築できる。これを用いて、回転水槽実験で現れた傾圧不安定波の成長・衰退といったライフサイクルを大きく左右するきっかけが何でどこであるのか、そのトリガーを明らかにする。 本研究では、上記の計画を実施して、引き続き台風内部構造の模擬と発生する波動メカニズムの解明を目的とした研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画がややおくれて繰り越したため。次年度は出張等で使用する予定である。
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