研究課題/領域番号 |
21K03658
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
筆保 弘徳 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (00435843)
|
研究分担者 |
松岡 大祐 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(情報エンジニアリングプログラム), 副主任研究員 (80543230)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 台風非軸対称構造 / 傾圧不安定 / 回転水槽実験 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、台風の非軸対称構造の形成に焦点を当て、回転水槽実験と深層学習を用いた予測モデルの開発に取り組んだ。台風の発達過程でしばしば非軸対称へと変形する。これらの構造は、温暖核を持つ渦構造である台風が、中緯度傾圧帯と類似の温度風関係を持つため、傾圧不安定の力学により形成される可能性が指摘されている。研究の目的は、回転水槽実験から得られる大量のデータを学習データとして用い、力学に依存しない流体予測モデルを構築し、非軸対称構造の形成トリガーを解明することにある。この目的のため、傾圧不安定波を模擬する回転水槽実験を行い、その結果を深層学習により解析した。具体的には、異なる回転速度や水深条件下で144条件の実験を実施し、それぞれの条件での非軸対称運動エネルギーの分布を調査した。 実験結果の解析には、粒子画像流速測定法を用いて動画から速度分布を定量化し、フーリエ解析を通じて波数ごとの運動エネルギーを算出した。このデータを基に、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の一種であるResNetを使用し、波数を推定するモデルを開発した。 得られた主要な研究成果は、回転水槽実験における波動分類と速度分布からの卓越波数推定モデルの構築にまとめられる。特に、地形性β効果および逆地形性β効果を模擬した実験では、回転速度の増加に伴い非軸対称運動が発生しやすくなることが確認された。また、機械学習による波数推定モデルは、6クラス分類で高い精度を示し、特定の波数で高い正解率を達成している。 これらの結果は、台風の非軸対称構造形成の予測可能性を高めることに寄与し、台風強度予測の精度向上に貢献する可能性がある。本研究は、理論的な解析だけでなく、実験および機械学習を融合した新たなアプローチを提示し、気象学分野における予測技術の進展に一石を投じるものである。
|