研究課題/領域番号 |
21K03661
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂崎 貴俊 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70723039)
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研究分担者 |
吉田 康平 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 研究官 (10636038)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自由振動 / 赤道波 / 準二年周期振動 / トンガ噴火 / Lamb波 / 再解析データ / 熱帯成層圏 |
研究実績の概要 |
本研究は、観測データ・気候モデルデータの統合解析と数値シミュレーションの実施により「自由振動はどのように生成・消失するのか?」という問題の解決を通じて、大気の素過程について理解を深めることを当初の目的としている。 計画初年度である今年度は、計画の遂行にあたって必要な観測データの整備から始めることにした。その中で、赤道に特有の水平構造を持つ大規模な大気波動(赤道波)が、熱帯成層圏中に存在することを発見した。さらに、その波の形態は背景東西風の変動(準二年周期振動:QBO)の位相(西風or東風)によって変化すること、励起源は冬半球の中・高緯度から伝播する停滞性ロスビー波であること、ただし東風中の構造は線形過程では説明できないこと、も明らかにした。これらの結果をまとめて国際ジャーナル論文で公開した(Sakazaki and Hamilton, 2022)。これらの波動は当初の研究計画でターゲットとしていたものではないが、赤道大気特有の固有振動モードという観点からその構造・出現時期を理解できる可能性がある。 また別の研究として、トンガの火山噴火に伴う気圧パルス波の解析を行った。これら遠くまで減衰せずに伝わる波動は自由振動の一形態であると考えられ、その伝播速度から、自由振動の構造・振動数を規定する重要なパラメター(等価深度)を推定できる。今回の噴火に伴うパルス波の解析、および、気候モデルによる再現実験から、これまで知られていた自由振動モード(Lambモード)とは別のモード(Pekerisモード)が存在することが強く示唆された。これらの結果も別途まとめて国際ジャーナル論文に投稿中である(Watanabe et al., submitted)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度中に実施する予定だった気候モデル実験の開始は想定より遅れているが、一方で、熱帯成層圏中での赤道波構造の発見、新たな自由振動モードの発見、といった(良い意味で)想定外の発見があった。これらを鑑みて「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
気候モデル実験を共同研究者と実施する。また同時並行でデータ解析により、自由振動をターゲットにしたエネルギー収支解析などを実施する。また、本年度明らかになった事象についての発展的研究も(当初の計画とは異なるが)行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより出張が制限され、研究打ち合わせ旅費に剰余が出たため。
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