研究課題/領域番号 |
21K03665
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
端野 典平 高知工科大学, 環境理工学群, 准教授 (10766520)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 雲物理 / 乱流 / 数値実験 |
研究実績の概要 |
初年度は、アラスカ北部の観測所およびMOSAiC観測実験のデータベースから単層の混合相層積雲を抽出することを予定していた。しかし労力と共同研究の状態を勘案し、2年目に行うこととした。その代わり、すでに実験設定が終わっているISDACの事例について、雲と乱流の時間発展について調査した。
6時間のみの再現実験について、雲レーダー観測量であるレーダー反射因子について比較した結果、氷粒子の大きさは定量的に再現できていることがわかった。しかし平均ドップラー速度と速度スペクトル幅の再現に問題があることがわかった。後者2つの変数は乱流の発達に伴う雲内部の混合と関係がある。6時間の再現実験では乱流が十分に発達していない可能性があるため、15時間の再現実験を行い時間発展を調査した。その結果、6時間までとそれ以降では乱流の様子が定性的に異なり、6時間までは雲頂付近にて乱流強度が強いが、それ以降は雲底付近にて強くなることが解析された。雲底付近の乱流強度の増加とともに、雲底で水蒸気の収束が起こり、雲内に水蒸気が流入することがわかった。これは先行研究のエアロゾルの再利用と同じ空気の流れを表しており、雲の持続には、雲底下で水粒子の蒸発に由来する水蒸気の輸送が大切であることが示唆される。
この結果に鑑み、まず水粒子のみ存在する状態で15時間だけLES実験を行い、雲底にて混合層が形成されるのを確認した。その後、氷粒子の形成を許す実験を行った。その結果、反射因子は過小評価ぎみであるが、平均ドップラー速度については改善が見られた。これは下降流が強く再現された結果である。これらは先行研究とも一致する結果であるが、速度スペクトル幅については観測と定性的な違いが存在し、雲頂におけるスペクトル幅が過小評価されていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
先に調査すべきことが明らかになったから。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる今年度は、長期観測データベースを調査し、混合相層雲が存在する時の風の鉛直シアや成層状態、水蒸気分布などの特徴を抽出する。そして数値実験の準備を整える。
同時に、ISDACの事例に関しても速度スペクトル幅の再現性の向上をめざし、実験設定の見直しや感度実験を行ってゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大状況下において、学会の出張や研究協力者の招待が不可となり、外国旅費を消化することができなかったため。今年度はCOVIDの感染状況は改善され、国外に出張できることが予想されるので、滞在時間を増やしたりして使用する予定である。
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