研究課題/領域番号 |
21K03665
|
研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
端野 典平 高知工科大学, 環境理工学群, 准教授 (10766520)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 混合相 / 層積雲 / 北極 / 雲物理 / 乱流 / 数値実験 |
研究実績の概要 |
本年度は、2019年10月から1年間実施されたMOSAiC観測実験のデータを取得し、混合相層積雲の特徴を調査した。プログラムを作成し、鉛直プロファイルのデータから12時間以上の継続時間する、単層の混合相層積雲を抽出した。これらの雲イベントに関して、Richardson数、Obukhov長、境界層高度、雲底高度、雲底からの結合距離などを計算した。
2つの長寿命事例(2019年11月17日と12月16日)は雲の形態がロール状とセル状に分類できる時間帯があった。そこで雲氷鉛直積算量(IWP)と雲水・雲氷鉛直積算量の比(TWP)を比較したところ、ロール状の雲の値がセル状よりも大きくなる傾向が見られた。下層の水蒸気量とTWPの比を比較すると大きな違いは見られなかった。他のすべての長寿命事例についてこれらの比の雲形態への依存性を調査したが、上記ほど明確な違いは見られなかった。
10月16日の事例では、地表付近の静的安定度は不安定、安定、不安定と推移し、安定時には13時間ほど結合した状態と判断できた。IWP/TWPの値は結合時にピークを示したが、雲水鉛直積算量(LWP)は最後の不安定時に最大となった。この観測実験中、地表面は海氷に覆われているが、不安定時において下層で地表付近よりも水蒸気が多く観測されていた。このため下層からの水蒸気輸送により、LWPが大きくなったと考えられる。初期の非結合から結合状態に推移する時間は8時間53分であったが、これは雲底付近の乱流混合が結合状態を引き起こすために要する時間と考えられ、数値実験の際の指標になる。またこの事例では初期に12m/sを超える風が400m付近で観測され、雲の発達に強い鉛直シアによる乱流混合が寄与している可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は先に調査すべき課題に取り組んだため、実施内容が一年ほど遅れている。また今年度までのCOVIS-19の感染拡大の影響で、研究協力者との国際連携が多少、遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
事例を理想化し、数値実験により雲の形態と雲微物理の関係、鉛直シアの役割を調査する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度の旅費は、コロナ禍による移動制限により使用できなかった。次年度は計画通り、研究協力者を訪問し、研究活動を活発化させる。
|