研究課題/領域番号 |
21K03666
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
足立 透 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 主任研究官 (10632391)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 竜巻 / フェーズドアレイレーダー / CNN |
研究実績の概要 |
竜巻の機構解明及び三次元検出技術の確立を目的として、気象庁が公開する竜巻等の突風データベースに記載された被害事例を対象に、フェーズドアレイ気象レーダーの観測データを収集した。気象研究所および日本無線株式会社がそれぞれつくば市および千葉市で運用するフェーズドアレイ気象レーダーの観測圏内において、計9件の竜巻性の被害事例が発生し、そのうち2件はこれら2台のレーダーによる同時観測に成功したことが明らかになった。そこでまず、最も高い空間分解能による観測に成功した2019年10月12日の千葉県市原市における竜巻事例に着目し、3次元渦探知実験を実施した。ここで開発した3次元渦探知技術は、まず30秒ごとのフェーズドアレイ気象レーダーによる多仰角観測データを単一仰角ごとに取扱い、各々の仰角面において数理モデルによるフィッティングと畳み込みニューラルネットワーク(CNN)によるパターン認識を組み合わせて2次元渦候補を抽出する。次に、各仰角面で得られた2次元渦候補を立体空間において鉛直方向にグルーピングし、時間連続性も考慮した上で立体渦として検出する。この技術を適用したところ、市原市の竜巻被害域において、高度2km付近にまで鉛直に伸びる渦が捉えられた。この渦の直径は地面付近で約200mであり、高度とともにその径が広がる様子が捉えられ、竜巻らしい渦構造を有することが明らかになった。さらに時間変化を詳細に確認したところ、上空のメソサイクロンと考えられる直径数kmの渦が継続的に存在していたこと、被害域を通過する5分ほど前からその下方に直径数100m程度の小さな渦が新たに形成され、探知される高度が地面付近にまで次第に降下する様子が明らかになった。これらの結果は、本研究で開発した竜巻渦の立体的探知技術の有用性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、当初の計画に基づいてデータ収集と解析、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による検出及び立体グルーピングに係る手法の確立に取り組んだ。この結果、初期的な手法の開発と顕著な竜巻事例への適用が可能となり、地上被害と明瞭な対応関係を有する立体渦の抽出に成功した。 これらにより、研究は概ね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究推進を通して、当初の計画が妥当であることが示唆された。そこで令和4年度以降も、当該研究計画に基づいて竜巻事例の解析に基づく現象の機構解明と渦検出技術の高度化を進め、学会発表や学術雑誌への論文投稿を通じた成果公表に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた物品等について合理的な調達が可能となったほか、新型コロナウイルス感染症対策に係る学術会議のオンライン化などに伴い、次年度使用額が生じた。この経費は、主に次年度以降の研究用物品の調達および研究成果発表に充てる。
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