研究課題/領域番号 |
21K03678
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
向井 広樹 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80817289)
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研究分担者 |
鈴木 庸平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00359168)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 粘土鉱物 / ユーロピウム / 誘導結合プラズマ質量分析法 / 集束イオンビーム/透過型電子顕微鏡法 / 電子線マイクロアナライザー / 高レベル放射性廃棄物地層処分 |
研究実績の概要 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分事業において、種々の放射性核種の環境中における挙動について理解することは重要となる。また環境中で粘土鉱物は優れた吸着能を持つが、その種類によって性質に大きな差異があることが知られている。そこで本研究課題では特に長半減期をもつアクチノイド系列の放射性核種と粘土鉱物の関係に着目し、その吸着脱離の性質や存在状態について研究を進めている。これまでアメリシウム(Am)のアナログとして、ユーロピウム(Eu)を用いて黒雲母、ハイドロバイオタイト、カオリナイト、モンモリロナイトといった種々の粘土鉱物について吸着脱離実験を行っている。誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を使用して、特にpHの影響に着目し、それぞれの粘土鉱物における低濃度から高濃度までのEuの吸着量について調べた。各粘土はpHが上昇するとともにEu吸着率が上昇する傾向が見られ、Euが高濃度の場合より、低濃度でより高い吸着率を示していた。また低pHでEuを吸着させた粘土鉱物試料について行った脱離実験では、カオリナイトからは比較的よくEuが脱離したのに対して、黒雲母、ハイドロバイオタイトからはほとんど脱離せず、これらの鉱物において強く固定されることが示唆された。さらにEuを吸着した黒雲母およびハイドロバイオタイト等について電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察・分析を行い、各粒子におけるEuの詳細な分布について明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題ではアクチノイド系列放射性核種の環境中での挙動について理解するため、粘土鉱物を中心とした試料に対して極低濃度から高濃度までの幅広い濃度、pHにおいて吸着脱離実験を行い、さらに様々な実験装置を用いて元素の存在状態について明らかにすることを目指している。これまでの研究において、種々の粘土鉱物を用いて、低濃度から高濃度までのEuの吸着脱離挙動について多くのデータを得ており、電子顕微鏡等の手法によっていくつかの粒子におけるEuの詳細な分布について明らかにしている。次年度に学会発表や論文執筆を進めるにあたり、十分な実験データを得られてきていることから、計3か年で行う本研究はおよそ順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまずこれまでの研究において十分なデータが得られていない濃度やpHにおいて吸着脱離実験を行うことを予定している。特に高pHの条件において元素を吸着させた試料について脱離実験を行うとともに、電子顕微鏡等の手法によって詳細に観察・元素分析を行う。またアクチノイド系列放射性核種は、環境中では特に極低濃度下での挙動が重要となるため、放射性核種を用いて極低濃度下で吸着脱離実験を行うことを予定している。さらにX線吸収微細構造(XAFS)の測定を放射光施設において行い、元素の存在状態について調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に所属機関が変更となったため上手く2021年度の予定額を使い切ることができなかった。余った予算は新たな所属先で研究環境を整えるため消耗品等に、2022年度に使用する予定である。
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