研究課題/領域番号 |
21K03680
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
神田 径 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00301755)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 草津白根山 / 比抵抗構造 / マグマ / 熱水系 / 志賀高原 / GNSS |
研究実績の概要 |
本年度は、年次計画に従って、深部低比抵抗領域が見つかっている草津白根山西から北西にかけての比抵抗構造調査の候補地点の下見を行った。元々の計画では15点程度であったが、少し多めに下見を行い、志賀高原地域から高山村にかけての合計20か所の測定候補地点を選定した。予定していた林道の何か所かが土砂崩れにより通行不能となっていたため、志賀高原西側の何か所かは下見を断念したものの、概ね計画通りの観測点配置が得られそうである。covid-19の影響により、役所等との許認可交渉は翌年度に持ち越しとなったが、概ね順調に進んでいる。また、草津白根山周辺の広域GNSS観測については、10月13日~25日にかけて、繰り返し観測点6ヶ所について、3か所ずつ2回にわけて測定を実施した。解析の結果、これまでと大きく異なる変動は得られていない。
これまでに草津白根山周辺で得られている地磁気地電流法データを用いて推定した3次元比抵抗構造について国際学会で発表し、投稿論文としてまとめた。草津白根火山全体では、顕著な低比抵抗領域が3ヶ所に認められ、特に、草津白根山の直下から北西部にかけて、深さ1.5 kmから少なくとも12 kmまで伸びる鉛直状の低比抵抗体が見つかった。この導体の上部は、極めて低い比抵抗値を示し、イオン濃度の高い火山性流体に富む領域と解釈した。また、下部のやや低比抵抗を示す領域は、部分溶融した領域であると解釈した。この部分溶融領域の直上に、測地学的研究から2014年の火山活動活発化の期間に観測された膨張源が推定されていることから,導体下部はマグマ溜りの一部であると考えられる。このマグマ溜りが志賀高原方面に伸びているようにも見えるが観測点が少ないためはっきりしない。なお、投稿論文のほうは現在改訂作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
志賀高原および高山村における比抵抗構造調査については、本年度は準備期間と位置付け、地磁気地電流法による測定場所の選定を行うことにしていた。災害による想定外の事象はあったものの、概ね予定していた観測点配置が得られている。また、地盤変動観測についても、当初の予定通り例年実施している10月にGNSS繰り返し観測を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
年次計画に従って、役所等への許認可申請を行い、許可を得たうえで地磁気地電流法による比抵抗構造調査を実施する。取得したデータは、これまでに草津白根山周辺で得られているデータと統合し、最新の3次元比抵抗構造インバージョン手法を用いた地下構造の推定を行う。
GNSS観測については、毎年同じ時期に繰り返し観測を実施し、深部地盤変動源の検出を試みる。推定された比抵抗構造については、GNSS観測の結果と併せて解釈を行う。特に深部低比抵抗領域の形成要因を様々な地球物理・地球化学データを基に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
比抵抗構造調査の実施のための許認可申請プロセスの一部を専門業者に外注することを予定していたが、許認可申請が翌年度となったため、そのための外注費が未使用である。また、GNSS繰り返し観測は研究協力者と共同で実施の予定であったが、covid-19の影響により研究協力者の出張が困難になったため、やむを得ず代表者のみで実施した。そのための旅費が未使用である。
次年度には比抵抗構造調査を実施予定であるため、本来の用途である許認可申請の一部の外注費として充てることに加え、比抵抗構造調査およびGNSS繰り返し観測の旅費として使用する。
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