研究課題
本年度は、年次計画に従って、昨年度観測点の選定を行った志賀高原周辺および高山村の22ヵ所において広帯域MT法調査を行った。当初は20ヵ所程度の予定であったが、下見箇所を増やしたことにより、予定より多くの場所でデータ取得を行うことができた。昨年度からの持ち越しとなった役所等との許認可交渉を5月から行い、8月までにすべての許可を得ることができた。観測は、まず8月下旬に高山村内の6点で測定を行い、その後、9月中旬~10月中旬にかけて志賀高原内の16点で測定を行った。このうちの何点かでは、急峻な地形のため、磁場測定をあきらめ電場のみの測定を行い、近隣の磁場データを用いて応答関数を算出した。ほとんどの観測点で良好なMT応答曲線が得られた。地下構造の推定は来年度に実施の予定であるが、AMT帯域のデータのみを用いた予察的解析を行ったところ、深部膨張源の推定される領域より西側の高山村の地下浅部は高比抵抗を示し、志賀山周辺はやや低比抵抗を示すという結果が得られている。先行研究では、志賀山周辺の浅部に低比抵抗領域は見つかっていなかったが、測定点を増やしたことにより、志賀山周辺でも浅部熱水系が存在するらしいことが示唆された。今後は解析に用いる周波数帯域を300秒程度までの低周波側に広げ、過去に取得したデータと併せてインバージョンを行い、深部低比抵抗領域の広がりを拘束する予定である。なお、AMT帯域のデータのみを用いた解析結果については、2023年のJpGU等の学会で発表する予定である。また、草津白根山周辺の広域GNSS観測については、本年度も10月14日~24日にかけて、繰り返し観測点6ヶ所について、3か所ずつ2回にわけて測定を実施した。解析の結果、これまでと大きく異なる変動は得られていない。
2: おおむね順調に進展している
志賀高原および高山村における比抵抗構造調査については、本年度は地磁気地電流法による測定を行った。当初の予定より多い22ヵ所において概ね良好なデータを取得できた。予察的な解析からは、志賀山周辺の浅部構造が明らかになりつつある。また、地盤変動観測についても、当初の予定通り例年実施している10月にGNSS繰り返し観測を実施できた。
年次計画に従って、まずは志賀高原地域の浅部比抵抗構造を推定する。その後、これまでに草津白根山周辺で得られているデータと統合し、最新の3次元比抵抗構造インバージョン手法を用いた地下構造の推定を行う。GNSS観測については、毎年同じ時期に繰り返し観測を実施し、深部地盤変動源の検出を試みる。推定された比抵抗構造については、GNSS観測の結果と併せて解釈を行う。特に深部低比抵抗領域の形成要因を様々な地球物理・地球化学データを基に検討する。
昨年度からの持越しとなった、比抵抗構造調査の実施のための許認可申請プロセスの一部の専門業者への外注業務について、外注していると本年度中の測定終了が見通せなかったため、やむなく許認可申請を全て研究代表者が行った。また、測定に使用するリチウムイオンバッテリーは、他経費により購入することができたため、本経費からの支出がなかった。これらの理由のため未使用額が生じたが、そのほかは概ね予定通りに使用した。次年度には比抵抗構造のデータ解析を終える予定であり、最終年度となるため、国際学会での成果発表の旅費として充当する予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Earth, Planets and Space
巻: 75 ページ: -
10.1186/s40623-023-01799-3
Journal of Volcanology and Geothermal Research
巻: 429 ページ: -
10.1016/j.jvolgeores.2022.107600
Journal of Disaster Research
巻: 17 ページ: 654, 662
10.20965/jdr.2022.p0654