研究課題/領域番号 |
21K03683
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
青木 かおり 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 特任研究員 (30513163)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 下北半島 / 完新世 / 津軽海峡 / 渡島大島 |
研究実績の概要 |
2021年度は下北半島の津軽海峡に面する関根浜、陸奥湾に面する野辺地町の完新世の堆積物を調査した。関根浜では完新世の有機質堆積物の連続試料を採取した。持ち帰った試料は、等間隔で分割したのちに洗浄・篩別を行い、実体顕微鏡で含有されている粒子の種類を観察をした。火山性粒子がわずかに増加する層準があることから、これらの層準に火山灰が降灰したかを検証するために、理化学的な分析を行う計画を立てた。 陸奥湾に面する野辺地町では、これまで報告されていない火山灰層を複数見出したことから、それらの理化学的特性を分析した。完新世の堆積物とみなされる有機質堆積物中に介在している火山灰層は2か所で発見した。完新世の有機質堆積物が堆積した場所は、中・前期更新世の海成層を小河川が谷を掘った跡に埋め立てられたと考えれ、中・前期更新世の海成層中には少なくとも3層の火山灰層があることを確認した。完新世の有機質堆積物に介在する火山灰層は、直下の炭素14年代から約6.3kaの堆積物であることが分かった。また、重鉱物の特徴や火山ガラスの化学組成から、背弧側の火山起源に対比されると目されることから、本研究の目的である渡島大島起源の噴出物である可能性が極めて高いと考えている。 津軽海峡の深海底堆積物中の火山灰試料について、篩別後に実体顕微鏡観察による岩石記載をすすめている。特に、6-7kaごろと想定さえる層準の火山灰層については、理化学的な分析を進める準備をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野外調査については、コロナ感染症拡大の影響で訪問を遠慮せざるを得ない事情があり、当初計画していた頻度は行えなかった。ただし、目的としていた火山灰の遠地での分布地点を特定し噴出年代を得ることができたため、今後の調査範囲を大幅に狭めることに成功した。 一方で、調査地点である野辺地町で完新世の有機質堆積物が堆積した場所は、中・前期更新世の海成層を基盤地質としている場所であるが、この海成層についての先行研究が極めて少ないことが判明した。本研究の成果を論文化する際に、基盤地質の記載をする上で問題となる可能性がある。 津軽海峡の深海底堆積物では、先行研究で炭素14年代が報告されている論文を参考にして、分析対象とする火山灰層の優先順位をつけて準備をしているが、高知大学海洋コア研究センターへの訪問が制限されることが多く、分析日程を十分に確保することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年は渡島半島での野外調査を最優先に進める。まず、渡島大島起源の1740-1741年噴火の噴出物を採取して、渡島大島起源の噴出物の特徴を把握する。さらに、6-7kaごろの堆積層を中心に、火山灰層の調査をすすめる。 野辺地町で完新世の有機質堆積物が堆積した場所の基盤地質である中・前期更新世の海成層には火山灰層が少なくとも3層見つけていることから、これらを同定するか年代測定を行うことで海成層の形成年代を明らかにする。また、渡島大島から野辺地町までの途中にあたる地域で、6-7kaごろに該当する火山灰が堆積していないか調査する予定である。 津軽海峡の深海堆積物中の火山灰試料について分析を進め、必要な層準については有孔虫殻化石を用いた放射性炭素年代値を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査対象地域が医療体制の脆弱な地域であることから、2021年度はコロナ感染症対策のため、予防接種が完了するまでは予定していた野外調査を遠慮せざるを得なかった。予防接種が完了後は、12月以降は積雪のため、さらに例年になく降雪が多かったことから3月も調査を目的として訪問することがかなわなかった。 高知大学への分析出張も、訪問研究者の受け入れ条件が緩和されるタイミングと当方の校務などとの兼ね合いで、冬以降は訪問がかなわなかった。 結果的に、出張旅費を大幅に繰り越すことになった。
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